『やっ...と、おる...っ...』


「嫌じゃないんだろ?」


『違っ...あっ...』


「こんなに締め付けてるくせにか?」


『あっ、待って...ッ...』


「待たない...」







嫌じゃない、と透に告げた後、絡んだ透の指が軋むくらいに強く握りしめた。膣内に埋まった透の指の動きのせいか、熱に浮かされる様に透の名前を何度も呼んで、どんどん熱くなっていく私の身体が、透に触られて喜んでる様に甘くなる声が、私の胸を何故だか締め付ける。真っ白になっていく頭の片隅で、透に彼女が居ることを思い出して、私の中の罪悪感が波の様に迫ってくるのに、やめて欲しくなかった。透の彼女に悪い事してるって、分かってる。分かっているのに、離して欲しくないみたいに、私の膣内が透の指を締め付けていく。透が何で私にこんな事をするのか、理由を知りたくて、でもその理由を知るのが怖かった。快感で揺れる瞳で必死に透を見つめて、透の口づけを待つ様に『透』と名前を呼ぶと、透は応えるように私の唇を奪っていく。ゆっくりと入ってくる透の舌に自分の舌を絡ませて、ちゅっと吸い上げられた舌が唇ごと透に引き寄せられる。途端に早くなった透の指の動きに合わせる様に私の膣内が痙攣していって、ゾクッと私の背中に快感が走っていく。再び絡みとられていく舌のせいで言葉にならない声をあげながら透から送られてくる快感に身を委ねて、何でこんなに胸が苦しいのかわからないまま私は絶頂を迎えていった。それでも止まらない透の指の動きと口付けのせいで私の敏感になった身体がまた熱を帯びて、逃げる様にビクッと腰を揺らすと、透は私の膣内から指を引き抜いて「腰、逃がすなよ」と離れた口の隙間から小さく笑みを浮かべていく。そのまま透が私の腰に手を添えて上半身を起こすと、透に支えられていた私の身体も起き上がって、起き上がる瞬間にズボン越しに硬くなった透自身が私の秘部に軽く触れる。これからする事を想像してドキドキ早くなる私の心拍数と、彼女ともこんな事しているんだろうか、なんて考えて私の胸が締め付けられるように痛くなって、考えれば考えるほど喉の奥がグッと苦しくなっていく。なんでこんなに胸が痛いのか分からないまま、私の視界がじわりと滲んで揺れる瞳で透を見つめる。透は困った様に眉を寄せながらため息まじりに少し笑って「やっぱり、俺にこういう事されるのは嫌なんだろ?」と目を凝らす様に私を見つめた。違う、そうじゃない。言いたい言葉が喉につっかえているみたいに出て来なくて、私は小さく顔を左右に振って透の絡んだ指を絡めなおしながら『違う』と小さく呟いていく。透が「じゃあ、なんで泣くんだ」なんて私の腰から手を離して、私の頬に手を寄せると、私は覚悟を決めた様に『透が、私以外にこんな事してるのが...嫌だ、から...』とゆっくりと瞬きを一度してから透を見つめた。






「なんで他の奴が出てくるんだよ」


『だって、透...彼女いるし...』


「彼女とは別れて、キスもしてない。手だって繋いだ事はない...もちろんこう言った事だって...全部、花子だけだ...」







私だけ、と言われたことにドキッとしながら頬に寄せられた透の手の上に自分の手を重ねていく。私は透の言葉を確かめる様に『本当に...?』なんて、なんでこんなに嬉しくて胸が熱くなるのか分からないまま、透の手をぎゅっと握りしめた。透が「花子だけだ...全部。花子しか、欲しくない」と言いながら私の唇に軽く吸い付いて、小さなリップ音が部屋に響いて消えていく。唇が離れると、透は確認する様に私の瞳を静かに見つめて、私も応えるように透を見つめた。何度か瞬きをして、透が私の頬に添えた手に力を込めたかと思えば「花子が、好きなんだ」なんて口にすると同時にまた私の口を塞いでいく。いつもと変わらないはずなのに優しく感じる口付けと、指に強く絡んでくる透の指の圧迫感が心地良くて、透の言葉に身体中が熱くなる。それと同時に私の目頭が熱くなって、鼻先がツンッと痛んでいく。変わるのが怖かった、幼馴染で親友という関係が。壊したくないこの関係が、あの言葉を言ってしまったら、終わってしまうんじゃないかと思った。だけど本当は気づいてたんだ。ずっと前から、幼馴染で親友と言う関係に戻れないんじゃない。戻るだけじゃ、足りないんだ。透に幼馴染以上に思って欲しくて、それは私が透を、幼馴染以上に思っているから。だから、胸が痛くなるんだ。どんどん溢れていく感情が追いつかなくなるみたいに、私の瞳に溜まった涙が頬を伝って透の手を濡らしていった。





「...嫌か?」


『...ッ...ちが、っ...』


「嫌だから、泣いてるんだろ?」


『こ、れは...』


「花子が嫌だったらもう、俺は...」


『私も!私も...多分...透が好き...』






透に好きと言われたのが嬉しいのに、言葉に出せない自分に焦って、思わず透の言葉を遮った。『好き』と言う瞬間に、ドキドキ早くなっていく心拍数が更に早くなって、口の中の水分が全部なくなったみたいにごくりと唾を飲み込んだ。『好き』と伝えた瞬間に自分の中でストンと何かが落ち着いて、私の胸がじわりと熱を帯びていくのと同時に顔も頭も熱くなる。透の言葉を待っているかの様にギュッと下唇を噛んで透を見つめると、透は驚いた様な顔をしてから一度瞬きをした後に眉を寄せて小さく笑った。「今更好きは嘘だ、とか言っても聞かないからな」なんて、ため息混じりに笑って私の唇をまた塞ぐ。絡んだ指を絡め直すと、頬にある透の手が私の腰へと降りていく。透が触れたところから伝染する様に私の身体が熱くなって、鼻から抜けていく私の声が甘くなる。どんどん深くなっていく口付けに頭がクラクラしてるのは、好きと自覚したからなのか、うまく酸素が吸えないからなのかわからない。だけどそれが何故だか心地よくて、私の胸がまた熱くなっていった。







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