「お前、花形の事どう思ってんの?」





藤真に話がある、と呼び出された休日の午後。私は家の近くに来ているから、と言われて近くのコンビニに急いだ。藤真に「奢ってやるよ」なんて言われてアイスを買ってもらってコンビニ前でアイスを一口頬張った。そしたらこの質問。なんだそれ?なんて思いながら『どうって...別に?普通の幼馴染だろ』と口から漏らすと藤真は不服そうに「どこまでされたか知らねーけど...普通は嫌いになるんじゃねーの?」なんて眉を寄せながら私を見つめる。私は藤真の言葉に確かに、なんて思うのにどうしても透を嫌いになれない自分が不思議だった。今まで透のそばにいたから?そんな事するやつじゃないって、勝手に思っているから?と、しばらく黙った私に、藤真は「じゃあ俺の事は?」なんて、真剣な顔して私を見つめた。





『え...?』


「俺の事は、どう思ってんだよ」


『なん...だよ...急に...』


「急にじゃねーだろ、俺...お前に告白したんだけど」






「返事もらってねーし」と私から目を逸らした藤真の言葉で、この前の出来事を思い出して私の顔が熱くなる。『多分って言ってたじゃねーかよ』なんて誤魔化す様にアイスを一口食べ様と口を開くと、藤真は私の手からアイスを奪い取って「本気ってつけただろ、ばーか」とかなんとか言って残りのアイスを見事一口で平らげた。





『あー!!!』


「ッ...頭が...」


『当たり前だろ!』





一気にアイスを食べたせいで頭が痛くなったのか、こめかみを押さえる藤真の背中をさすると、藤真はため息混じりに笑って「田中のそう言うところが、多分好きなんだろーな」と馬鹿みたいなことを口にした。私は藤真の言葉に何故だか恥ずかしくなって、『藤真は...友達にしか見えねーよ』と眉を寄せながら言うと、藤真は「だよなー」なんて小さく笑う。私は何を言ったらいいのか分からなくて、黙ったまま藤真を見つめた。藤真は私の視線に気づくと困った様に眉を寄せて「そんな顔してんじゃねーよ、ばーか」と私のおでこをコツンと小突いて、「んで?花形の事は?」なんて催促する様に口にした。






『だ、から!透はただの幼馴染だって...!言ってるだろ!』


「はぁ?そんな顔真っ赤にさせて言う台詞じゃねーだろ」


『赤くなってなんか...ッ!』


「...」






熱くなった顔を誤魔化す様に藤真から視線を逸らすと、藤真が突然黙るもんだから『なんだよ』なんて口を尖らせながら藤真を見つめ直した私の腕を藤真が突然掴んできて、私は驚いた様に身体を強張らせた。『藤真...?』と確認する様に藤真の名前を呼んだ私に「じゃあ俺がキスしても、田中は俺のこと嫌いにならないわけ?」なんて顔を近づけてくるから、私は思わず藤真の脛を足で思い切り蹴りあげると、藤真は「いってぇ...!」と声を荒げながら私に蹴られた脛をさするようにしゃがみこんだ。





『何ッ...すんだよ!』


「こっちの台詞だろ!」


『藤真が...!き、き、キスなんか!!しようとするからだろ!?』


「嫌いにならないかどうか確認しただけだろーが!?」


『ばっ...!じゃあ顔近づけてくんなよ!』


「好きなんだからあわよくばを狙うに決まってんだろ!』


『狙うんじゃねーよ...!』







『馬鹿じゃねーの』なんて口を尖らせながら藤真から顔を逸らした後『透はただの幼馴染だし、それに透には...彼女いるじゃん』と続ける様に言った私に、藤真が「彼女いなかったら、どうなんだよ」なんて立ち上がって私を見つめる。藤真の問いかけに私は何故だか言葉を詰まらせて、自分がなんで透に彼女がいると言う言葉だけで胸が苦しくなるのか分からないまま『んなの、知らねーよ』と自分の気持ちから逃げる様に地面を見つめた。





I don't want to notice
(知らねーよ、ばーか)



藤真と別れて家に帰ると、私はすぐに布団に入った。自分の中で処理しきれない感情が生まれたみたいに頭の中がぐちゃぐちゃになって、それを誤魔化す様に私は静かに瞼を閉じた。







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