仕事を休んだ2週間の間に田中が風邪を引いて寝込んだ。勿論俺は看病して、過保護と言われても良い位、俺なりに出来る事をやった。田中が風邪を引いてから3日後の夕方、リビングの扉を開けると、『あ、牧くん』なんていつも通りに俺の名前を呼ぶ田中の姿があった。病み上がりなのに無理して家事をしてるんじゃないかと思って、急いで田中に近寄ると、確認するみたいに「もう、大丈夫なのか?」と、田中のおでこに手を当てた。手を当てた田中のおでこは少し熱くて「…やっぱり、まだ熱いんじゃないか?」と言った俺に、田中が小さく言葉を漏らしていく。聞こえなかった言葉を聞き返すみたいに「なんだ?」と、田中の顔を覗き込むようにして屈んだ瞬間に『本当に!もう大丈夫だから!』と、払いのけられた俺の手が、酷く痛むと同時に思わず田中の手首を掴んだ。もう、本気で田中に嫌われてるんだって思った。風邪を引いてる時はお互いの事を普通に話せて、田中と仲良くなれた気がしてた。そう、だよな。あんな事して、嫌われないわけないんだ。じゃあ、もう...いいじゃないか。



「わかったよ。じゃあ…遠慮はいらないよな」




どうせ俺は、嫌われてるんだから。ヤケクソ混じりに俺が田中の唇を強引に奪っていくと、俺の胸に田中の手が当たる。多分、抵抗してるんだろう。そんな小さな抵抗なんて、俺には意味ない筈なのに、どんどん胸が苦しくなっていくのと同時に田中の腰に手を回して、グッと抱き寄せる。好きだ。なんて言えるわけもないのに、俺の心の中に響いていく言葉が、俺をどんどんおかしくさせていくみたいだった。田中の洋服の隙間から手を入れて、なぞるみたいに田中の背中に指を這わせると田中の身体が小さく揺れる。俺の指で感じてくれている、そんな些細な事が嬉しくて「どこでも感じるな」なんて言って俺は小さく笑った。俺の言葉と共に赤くなっていく田中の顔が、熱くなったような田中の瞳が、俺をどんどん熱くさせていく。田中は『やめて』と、俺を見つめながらそう言って、俺はため息交じりに「いい加減にしろよ」なんて言って、田中をベランダの窓の前まで引っ張っていった。「ちゃんと、自分の姿をよく見ていろ」田中に、お前の身体は俺の手で熱くなって、欲しがってるんだって、教えたかった。『な、なんで…ッ!』なんて眉を寄せた田中が窓に映って、俺は頭の中に浮かんでる「好き」の2文字を飲み込んで「花子が俺の下僕だって、教えてやるよ」と、田中の耳元で囁いていく。もう、俺のものになってしまえばいいのに。俺の手で、こんなに乱れる癖に、俺に抱かれて、欲しいと言うような顔をする癖に、身体をどんなに重ねたって、田中は俺のものにはならない。潰れそうに痛む胸が、俺の喉の奥を締め付けるみたいに苦しくさせていって、自分の感情が抑えられないみたいに、どんどん行動がエスカレートして、田中に気持ちをぶつけていく。その分苦しくなってく胸が、田中を愛しいと思う感情が、俺の心と身体を引き裂いていくみたいだった。こんなに近くにいるのに、田中の気持ちが分からなくて、知りたくもなかった。本心を知ってしまったら、田中が俺から離れていく気がしたんだ。















会社に呼び出された後、家に帰る頃には部屋が真っ暗で、田中が寝た事を理解した。寝たのを確認するみたいに田中の部屋の扉を開けると、声を殺す様な田中の小さな声が聞こえて、最初は泣いているのかと思った。俺の、せいだろうか。昼間、いや、これまでに何度だって抵抗されたのに、無理矢理抱いたんだ。嫌じゃないわけないよな。と、部屋から出て静かに扉を閉めようとした時に『もっと...』なんて田中の甘くなった声が聞こえた。まさか、な。なんて思って静かに近づいて、ギィッと床が軋む音がしたのに、布団に包まっている田中は気づいてないみたいだった。そのまま包まっている布団が静かに擦れる音がして、田中のベッドに乗り込んだ。ドキドキと早くなる鼓動が、期待してるみたいに熱くなる俺の身体が、田中がしている行為を期待させていく。田中の顔が見えるところまで行くと、枕を噛みながら、顔を赤らめている田中が見えた。「何してるんだ?」と、言った俺の言葉にビクッと田中が驚いた様に身体を揺らした姿を見て、俺の身体が余計に熱くなっていくみたいだった。「熱が上がってないか心配で見にきたのに...花子、1人で何...してたんだ?」と、問いかけた俺に『えっ、あっ...なっ...何も...っ!』なんて、荒くなった様な呼吸で途切れ途切れに言った田中の包まっている布団を剥ぎ取っていくと、突き上げられた下腹部が、今まで田中がしていた行為を物語っていて、『見ないで』と、恥ずかしそうに言った田中の言葉に、俺の理性がプツンと切れる音がした気がした。田中のズボンと下着を一気におろすと、田中の秘部に2本の指が埋められていくのと同時に頭がクラクラするみたいに俺の身体が熱くなっていって、指をなぞるだけでひくつく様な田中の秘部の入口がまるで俺を誘ってるみたいだった。「何を想像してたんだ?いや...誰を想像した?」なんて、俺の名前を言ってくれればいいのに、と言う願望と共に問いかけると『や、だ...いっ、言えな...あ、っ』と、秘部をなぞる俺の指に反応する様に甘い声を漏らしていく。「ご主人様の言うことが聞けないのか?花子は俺の下僕なんだぞ」なんて、無理やり言わせるみたいに田中に言葉を投げかけた。続けて追い詰める様に田中の耳に舌を這わせていくと『牧くん』なんて田中が甘い吐息まじりに俺の名前を呼んできて、俺の思考が一瞬止まる。「ん?」と、確認するみたいに声を漏らして、俺が投げかけた質問の答えなんだって理解した。俺を想像した?田中が?なんて、頭の中に駆け巡っていく自分の言葉にどんどん俺の胸が熱くなっていく。「なんだ...俺で、してたのか?」と、笑いながら俺が言った言葉に、田中が小さく頷いて、心が満たされていくみたいに俺の中でジワリと何かが溢れていった。俺でこんなに濡らして、俺を想像してこんな事してたなんて言われたら、俺の自制心をコントロールできるはずもなかった。その日、田中が俺の上で腰を振っていく事が、俺に言われてしてきたとしても田中から俺にキスしてくれる事が、酷く嬉しくて、俺の溢れ出ていく感情が、心が、身体が、満たされていくみたいに熱くなっていった。








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