「契約書にちゃんと書いてあっただろ?場合によっては下僕に降格する。と」




嘘をついた。そんな事、書いてあるわけないだろ。自分を嘲笑う様に小さく笑ったのに、田中は俺の嘘を信じた。そういえば、田中は契約書をちゃんと読んでいなかったよな?と、思いながら田中に「ちゃんと読まないでサインした、田中も悪いんじゃないか?いや...花子、か」なんて耳元で囁いて、田中の耳に舌を這わせる。そのまま耳元で「いいか花子。今日からお前は俺の下僕だ」なんて呟いて、田中をどんどん犯していく。触れたかった田中の肌に、香ってくる田中の匂いに、口から漏れてく田中の甘い声に、満たされていくみたいだった。














「花子...?」




散々田中を犯した後に、ベッドで寝息を立ててる田中の瞼に口付けた。自分で酷いことをした癖に、田中の赤くなった瞼に胸が痛んだ。何、してんだ俺。馬鹿みたいなことをしたと分かっているのに、田中を抱けた事が嬉しかった。だけどその分苦しくて、田中の手首についた手枷を外していくのと同時に、田中の指に自分の指を絡めていく。触れたかった、この指に。普通の恋人みたいに、愛されて、愛して、優しく甘く抱きたかった。だけど俺は選択肢を間違えて、田中を傷つけた。




「何、してんだ...」




呟いた言葉が静かな部屋に響いてるみたいで、余計に俺の胸が痛んでく。田中の気持ちも考えずに、身勝手で馬鹿だよな。だけどこんな馬鹿なことをするくらい、田中に惹かれてるんだ。思いながらお姫様抱っこするみたいに田中を抱き抱えて田中の部屋のベッドへ運んだ。明日から、どんな顔して会おう。田中は俺のことを、ちゃんと男として見てくれるだろうか。いや、怯えるかもな。怖かっただろ...好きでもない奴に抱かれるなんて、嫌だったよな。そんな事聞けるはずもなくて、俺はベッドで眠る田中の唇に自分の唇を重ねた。






たとえ恋人じゃなくても
(俺だけのものにしたい)



「...好きなんだ、花子...」



聞こえるわけなんてないのに、俺はそう呟いてまた田中に口付けを落としていった。






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