『仙道ッ!!』





「ん?」





『ん?じゃないよ!あんたね!』





多目的準備室であんな事があった次の日、私は1日仙道を探していた。タイミングが悪いのかなかなか仙道に会えなくて、結局放課後の部活に行く前の仙道を待ち伏せしつつ、無理やり捕まえることになる。なんで私がこんなに必死になっているのかと言うと、昨日あった事のせいで使い物にならなくなったビショビショの下着を仙道が持っていってしまったからで、いや、その代わりに私も仙道の体操着のズボンを借りたのだけれど、そう言う事じゃない。なんて思いながら仙道の体操着を入れた紙袋を仙道の胸に押し当てると、仙道は笑って「あぁ」なんて言っていた。いや、待て私の下着は?なんて人が大勢いる放課後の廊下で言えるわけもなくて、私は口をつぐんだ。






「田中、昨日のパン...」






『あーー!!』





言いたくなかった言葉を仙道が口にしようとするもんだから、私は仙道の言葉を遮るように声を荒げて、仙道の口を手で塞いだ。仙道は一瞬困ったように眉を寄せて、私の手首を掴むと小さい声で「返してほしい?」なんて言って笑った。私がコクリと首を縦に振ると、仙道は私が押しつけた紙袋を受け取って「じゃあ行こうか」なんて言って私の手首を掴んだまま歩き出す。






『どこ行くのよ』





「昨日と同じ場所」





『変なことしないでしょうね』





「それは田中次第かなー」






「どうだろう」なんて笑みを含んだ声で言った仙道に、私は内心ドキドキしていて、なんだか掴まれた腕が異常に熱を持ったみたいに熱かった。そのせいか、私はいつもの悪態をつく事ができずに、熱くなった顔を隠すように下を向いて歩く。仙道はそのことに気付いてるのか気付いていないのかわからなかったけど、私の手首を握る仙道の腕に、少し汗が滲んでいたのを感じた。





















「さてと」





『ここで、返してくれるの?』





「どうかな?」






そう言った仙道が、多目的準備室に入った私の背後に回って、ドアを後ろ手にガラリと閉める。その瞬間、ガチャッと鳴った音を聞き逃さない私は『なんで鍵閉めたのよ』なんて仙道の方を振り返って眉を寄せた。仙道はいつものようにニコニコ笑いながら「パンツ返してほしい?」なんて言うもんだから、私は『当たり前でしょ!』と口を尖らせて仙道から視線を逸らす。私が仙道から視線を逸らした理由は簡単で、なんだか昨日された事がまた起こるんじゃないかなんて、不安と期待が入れ混じる私の心が動揺していたから。胸がドキドキと早くなって、近づいてくる仙道と同時に私は後退る。






『なによ』





「田中、こっちみて」





『なんで...』





「こっち向いてくれないと、返せないよ」





そう言って仙道が私の方に詰め寄ってきて、私はというと、後ろに下がったせいで床に置かれた段ボールにかかとが小さく当たってピタリと足を止めた。『何もしない?』って私が呟くと、仙道は「期待してんの?」なんて笑みを含んだ声を出す。私はその言葉に顔がカッと熱くなるのを感じて、目を瞑って期待なんか、してない。って言葉が私の口から出る前に仙道が「今日はゲームしようか」なんて言って笑った。





『ゲーム?』





「うん。15分間俺のすることに耐えられたら、パンツ返してあげる」





『なにそれ?』





「でも、田中が耐えられなかったら土曜日俺とデートしよう」





『は?』






言われた言葉に私は思わず目蓋を開けて仙道の方へ顔を向ける。何言ってんの?デート?なにそれ?なんて思ってる私の事なんかお構いなしに、仙道がドアから死角になっている場所に移動してあぐらをかくようにして腰を下ろした。「俺の上に跨って」なんて言った仙道の言葉に、私はギュッと自分の拳を握ると『私はゲーム受けるなんて言ってないけど』なんて口を尖らせる。仙道は「パンツ返してほしいんでしょ?」なんて笑っていうもんだから、私はなんだかムッとして『耐えたら絶対に返してよ』と仙道の上に跨るように移動した。我ながら単純な奴だな、こんなの断ればいいのに。なんて思うのに、目の前にある仙道の顔に私の胸は熱くなっていく。






『キス、しないでね』





「わかった。しないよ」






「今日はね」なんて後付けのように言った仙道がスマホのタイマー機能で15分に設定するのが見える。「今からきっかり15分だから」って言って押されたスタートボタンが、残り時間を告げていく。私は15分なんてすぐでしょって思いながら、仙道の目を見つめた。仙道はしばらく私の目から視線を逸らさないまま、私の太ももを優しく撫でていって、次第に下着を避けて秘部に到達するみたいに移動した指と共に、私の首元に顔を埋めていく。ちゅっと鳴り響くように音を立てた仙道の唇が、ドキドキしている私の胸をさらに熱くさせるみたいに熱くて、私は目をギュッと瞑ったのと同時に、仙道の肩に手を置いた。






Back