「田中、今日暇?」






『え?放課後?仙道部活でしょ?』






月曜の朝、下駄箱で偶然会った仙道にそう言われて、私は内心ドキドキしていた。土曜の夜のこともあって、私は仙道のことを意識してしまっているみたいで、なんだか自分が嫌になる。私の返答に仙道が「いいや」なんて言うもんだから、あれ?今日は部活ないの?テスト前でもないのに。なんて思っていたら「今から、暇?」と、仙道はニコニコしながらアホなことをわたしに呟いた。







『なに言ってんのよ、これから授業あるでしょ』






「サボれば?」






『ばか、私は仙道みたいに不真面目じゃないんだから』






そう言って下駄箱から上履きを取ろうとする私の手を掴んで、仙道が「いつならいいの?」なんて言うもんだから、『お昼休みとか?放課後とか?』と答えると、仙道がふーん。とかなんとか。笑みを含んだ声に私はなんだか眉を寄せる。こいつ、変なこと考えてないでしょうね。なんて思ってる私とは裏腹に、仙道が「じゃあ昼休み、空けといてよ」なんて言って私の返事を待たずに背を向けて手をひらひらさせながら去っていく。内心ドキドキしていた私は、まさか仙道お昼休みにそう言うことしたりしないよね?まさかね、学校だし、なんて不安になりつつ、午前中の授業を過ごした。



















「田中」





『んー?...え!?!?』





4時限目終了の合図の鐘が鳴ったとともに、頭上から声が聞こえて上を見上げると仙道が私の机のすぐ横に立っていて、私は頬杖をついていた手をパッと頬から離して驚いた。ちょ、なに、まだ先生いるんですけど、なんなら、はい今日はここまでーの先生の合図ないからまだ一応授業中なんですけど。なんて思った矢先、「まだこのクラスの授業終わってないぞ仙道ー!」なんて先生の声が聞こえて、私はクラスの注目の的になったみたいで恥ずかしくて顔が熱くなる。そんな私を尻目に、仙道はあはは、と頭をかいて「廊下でてまーす」なんて言って先生にペコペコしながら仙道が廊下に出ていった。結局、仙道が廊下に出たすぐ後に授業は終わって、私は教室のドアを真っ先にガラリと開ける。そこにはニコニコとご機嫌な仙道がドアにもたれかかっていて、私の方を向いて「お、終わった?」なんて言うもんだから私は思わず眉を寄せた。






『ちょっと、恥ずかしいでしょ』






「あはは、ごめんごめん。待ちきれなくってさ」






『お昼食べてからかと思ってた。なに?ご飯一緒に食べるの?』






「あ、お昼のこと忘れてた」






『もー、なにやってんのよ。仙道購買だったっけ?行く?』






「うん、田中は?」






『私はお弁当あるから』





「ふーん、じゃあ一緒に来てよ」






『いいけど...』なんて一通り会話を終えた後に、仙道が私の腕を掴んだ。私は驚いて仙道を見ると、仙道はいつもみたいに笑って「行こうか」と言って私の腕を引く。ちょっと、周りに注目されてるんですけど、ただでさえ仙道は目立つのに、私は注目なんかされたことないし、恥ずかしい。なんて思いながら、私は『仙道、手離しても歩けるから』と一言。仙道はそんな私の言葉なんか聞こえてないフリをして、そのまま購買に向かって行った。









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