『仙道、待って...』






「どうかした?」






『その...キスはしないで』






ホテルの一室に入った私達は、すぐさま制服を脱ぎ捨てると交互にシャワーを浴びて、お互いタオル一枚でベッドに向かった。昼間なのに薄暗い室内が時間を忘れさせるみたいな感覚に陥って、体感的には制服を脱いでから1時間くらい経過してる気がする。そこで近寄ってきた仙道の顔に手を当てて、私が『キスしないで』なんて呟くと、仙道は少し黙った後に「わかった」って優しい声で短く答える。なんだか薄暗くて仙道のシルエットしか見えないせいか、友達の仙道とホテルに来ているからか、授業をサボっている罪悪感からなのか私の胸はドキドキしていた。(多分、全部にドキドキしてるのかも、)







『私、その...不感症らしいから...声出さなくても気にしないで』







「うん、大丈夫だよ。そのままリラックスしてて」






フッと笑みを含んだ様な声が聞こえて、私はコクリと小さく頷く。仙道は心臓の音を落ち着けるみたいに胸に当てていた私の手を掴んで、仙道の顔が私の首元にゆっくりと埋まっていった。首元に仙道の熱い吐息を感じて、私は薄暗いのにギュッと目を瞑ると「力抜いて」って首元から仙道の優しい様な、艶めいた様な声が聞こえる。『わかんないよ...』なんて言うと仙道の舌がぬるりと私の首を這って、なんだかゾクリと背筋に走った。






『...ッ...』






首をちゅっと吸われたり、舌がぬるりと這ったりしている感覚に翻弄されてるみたいに、心地の良い感覚が私を襲う。仙道の舌が徐々に耳まで上がって言って急に「集中して」なんて吐息まじりに囁かれて私は『あっ』と、小さく甘い声を漏らした。自分の声に驚いて、仙道に掴まれていた手を強引に自分の口へ持っていって口を塞ぐと、耳元で仙道が「花子の弱点は耳か」なんてまた囁く声が聞こえて私は首を左右に振って否定する。と、言うか名前。今まで苗字呼びだったくせに急に下の名前で呼ぶからドキドキしただけ、それだけなんだから。なんて自分に言い聞かせるみたいに私はさらにギュッと強く目を瞑る。






「不感症じゃないって、教えてあげるよ」






『ふっ....ッ...』





仙道が呟くみたいに言った後、耳元でピシャリと水音が聞こえて、それと同時に熱いようなヌルリとした感触がして、仙道が私の耳を舐めてるって理解するのに時間はかからなかった。自分の弱いところが耳なんて知らなかった事もあるけど、こんなに執拗に耳を責められたことのなかった私は、本当に溶けるような感覚がして、ゾクゾクと背筋に何かが走る。仙道はそんな私を知ってか知らずか、耳を舐めながら私のタオルを外して、露わになった肌に指でなぞる様に優しく触れていく。






『ッ...ん、っ...』






「花子」






『ぁっ!ッ...ッ!』



不意に呼ばれた名前にビクッと肩が揺れるくらいに驚いた。驚いたと同時に漏れ出た声に、仙道がクスッと笑った声が耳元で聞こえて「名前呼ばれるのも好きなんだ?」なんて言って私の事をからかってるみたいに意地悪く囁く。その後すぐに仙道の指が私の胸の突起をかすめて、さらに私は声を上げるみたいに塞いだ手から声が漏れ出ていた。






「あれ?不感症じゃ無かった?」






『ッ!うるさっ...いっ、あっ!!』





笑った様な仙道の声に私は顔が熱くなったけど、いつの間に移動したのか、仙道の柔らかい舌先が胸の突起をかすめた事にビクッと体を揺らしながら甘い声を漏らして、更に顔が、全身が、燃えたみたいに熱くなる。仙道の触れたところ全部が熱を帯びたみたいに熱くなっていくのと同時に、薄暗くて見えないはずなのに恥ずかしさに耐えきれずに私は顔を手で覆い隠した。






「指でされるのと、舐められるのどっちが気持ちいい?」






『わっ..かん...な、い...ぁっ』






「どっち」





仙道の声とともにピピッて音が聞こえて、顔を覆った指の隙間から光が漏れたことに気づく。仙道め、明るくしたな?なんて文句を言う間も無く、仙道が私の両手首を掴んで、無理矢理顔にある手を退けると、私の視界は一瞬白くぼやけて、仙道の瞳が私を見てることに気付いて、思わず顔を横に逸らした。






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