『仙道!一生のお願い!』
「ん?なに?」
『ちょっとこっちきて!』
ご飯を食べ終わったお昼休み、そう言って越野と話している仙道の手首を無理矢理掴んで人気のないところに誘い出すと、仙道は「告白でもするの?」なんて言って笑った。
『仙道だからお願いするんだからね』
「ん?」
『聞いてくれる?』
「俺が出来ることであれば善処する、かな」
『私にセックスが気持ちいいって教えて欲しいの!』
「は?」
仙道は間抜けな声を出してから少しだけうーんと考えて咳払いをしてから「は?」なんて同じ台詞を口から出すもんだから、私はまた『だからセックスを!』なんて拳を作って同じ台詞を呟こうとする。だけど仙道が私の口に手を当てて「ちょっと待て」なんて言って遮って困った様に眉を寄せた。
「なんでそんな唐突に...」
『仙道ってセックス上手いで有名じゃん!』
「...知らねーよ...」
『俺が出来ることであればって言ったじゃん!今の所仙道にしか、こんな事頼めないの!!』
こんなに仙道にお願いするのには理由があって、1週間前、私は彼氏に別れを告げられたのだ。しかも、その理由が「お前、不感症だろ?」なんて言葉で私は絶句。しばらく途方に暮れた私は"セックスが上手い"と噂の仙道と友達で、だけど色恋に発展することもなく、一回割り切りがうまい仙道は私にはうってつけの相手なんじゃない?なんて考えて今に至る。カクカクしかじか、とかなんとかで仙道に説明すると、仙道はうーん。とまた悩んだ様な真似をして「良いけど、俺のこと好きにならない?」なんてアホみたいな質問を私に投げかけた。
『ない!絶対にない!』
「絶対に、なんてあり得ないでしょ」
「ありえる!だって仙道みたいに、女ったらしなナルシスト、絶対に好きにならない!』
言い切った私に仙道は少しピクリと眉を動かして「そこまで言うなら一回だけ」なんて言って私の腕を掴んだ。(あれ?ちょっと怒ってる?)
『なによ、』
「ホテル...行こうか」
『え?い、今から?』
「今から」
『授業はどーすんの?』
「サボる」
『放課後部活、するんでしょ?』
「部活前に戻るから、大丈夫」
なに怒ってんのよ、女ったらしなナルシストって言葉は本当じゃないの。なんて心の中で呟いて、私は仙道に引かれるまま歩き出す。『あ、カバン』『財布...鞄の中だよ』なんて歩きながら喋る私に「いいから」なんてピシャリと言い放つ仙道の言葉に私はなにも言えないまま仙道について行くしかなくて、腕を引かれながら、これからされる事を何にも想像していなかったこの時の私は、幸せだったんだな。と後に思うことになる。