「田中、俺からの一生のお願い...聞いてくれる?」




『...内容による...』





「俺、田中と居るのが好きだったんだ。他愛ない話して、俺の話で笑ってくれる田中が好きでさ」




『...何よ、急に...』




「もちろん、いつもみたいに素直じゃない田中も好きだよ。馬鹿、なんて言うところも可愛いし」




『...嘘、つき』




「本当本当。それに、今みたいに田中が泣いてたら、俺、飛んでくよ。ずっとそばに居たいし、田中の笑った顔も、怒った顔も、困った顔も、喜んでる時の顔も、考えてることも全部知りたいくらい、田中が好きなんだ。」




『...』




「だから、一生のお願い。俺と付き合ってよ...花子...」





掠れたような声で仙道が呟くと、仙道が腕に力を入れて、私の身体がつぶれちゃうんじゃないかって位の力で抱きしめられる。本当に愛の告白、みたいだった。でも、仙道は私以外にもそう言う関係の人はいて...頭でグルグル考えてもわからなくて私は『昨日一緒にいた子にも、そう言うこと言ってるの?』なんて口から思わずポロリと漏れる。それに対して仙道が私の二の腕を掴んで仙道の胸から引き剥がした後に私の顔を覗き込んで「ん?」なんてアホみたいな顔で眉を寄せた。焦ってる?そりゃ、そーだよね。って思いながら、仙道から視線を逸らすと仙道が「昨日って何?」なんて言うもんだから、私は多目的準備室で見たことを伝える。私の話を聞いた後に仙道が堪えるように笑って下を向くもんだから、私は思わず『何笑ってんのよ女ったらし』って口を尖らせた。





「昨日の子は知らない子だし、告白もちゃんと断ったよ」




『一緒に、寝てたじゃん...』




「そりゃ寝てる間に勝手に寝られたら、気づかないだろ...ん?あれ?なんでそんな事気にするの?」




『な、なんでって...』




「うん」




『そ、れは...』





「気になるのは、なんで?」





笑みを含んだみたいな仙道の声で、私は思わず目を瞑った。仙道を、信じて良いんだろうか。他の子にも同じ様なことを言ってたら?本当に、私だけ?色々な事が頭を回るけど、仙道の質問に追い詰められてく私は胸の苦しみと今の状況がもうわからなくて、覚悟したみたいに拳を握って『仙道が好きだから』ってすごく、小さな声で呟いた。口にした途端に顔と体が熱くなって、とっても恥ずかしい。だけど私の口からは何故だか止まらないみたいに『好き、仙道...』ってもう一度、今度は仙道に聞こえるくらいの声が漏れ出る。私は何も返ってこない仙道の反応が気になって、目蓋を薄く開けると、仙道はぽかんとしながら真っ赤な顔して私を見ていた。『なんて顔してんのよ』って眉を寄せたわたしに、仙道が困った様に眉を寄せて「本当、なんで急に素直になるかな...」って言ってわたしの二の腕から両手を離して私の頬に手を当てる。いつもより優しくて震える様な仙道の暖かい手が私の胸の苦しみをなくすみたいに頬を包み込んで「じゃあ、俺と付き合ってくれる?」って小さく笑った仙道が私を見つめて、私は『私だけ?』って呟く。それに答えるみたいに仙道が「うん。花子だけ...花子だからこんなに必死なんだ。」なんて言うもんだから私は仙道に『じゃ、あ...付き合う』って言って首を縦に振った。それと同時に仙道の顔が近づいてきて、私の唇に触れるくらいの距離でピタリと止まる。





「キス、していい?」




『馬鹿、そういうのもう聞かなくていいから...』




「あはは、そうなんだ」






言ってから仙道の唇が私の唇に軽く触れて小さなリップ音が私の耳に、身体に響いていく。その後頬から手を離した仙道が私をギュッと抱きしめて、「花子、好きだよ」なんて呟いて、私の顔が、胸が熱くなっていく。それと同時に仙道が私の顔にまた近づいて、今までのキスとは違う、恋人同士の甘い甘いキスをした。






キス、して
(私だけに、キスして)






「ところでなんで泣いてたの?」



『仙道が...私以外にもそう言うことしてるのかなって...思ったら悲しくて...』



「やけに、素直だね...」



『何よ、その顔』



「あー...駄目だ。今からセックスしよう」



『馬鹿じゃないの!?』



「花子が素直なのは貴重だから」



『...じゃ、じゃあ...私の部屋、来る?』



「うーん。花子の部屋にすげー行きたいけど、今からホテル行こう」



『え?なんでよ!?』



「多分一晩中することになるよ。途中で親御さん返ってきたらびっくりするだろ」



『何言ってんのよ!?馬鹿じゃないの!?て、言うかそんなに出来ないし!』



「いいや、一晩中する」



『しない!馬鹿!』



「じゃあ、行こうか」






Fin.
(2020/09/26)


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