「まいったな...」






なんだ、あいつらそう言う関係だったのか。俺は田中が素直じゃない事を知っている。前に「越野のこと、好きなの?」って言った俺に田中は、『はぁ!?そんなわけないでしょ!?』って答えたけど、あれは嘘じゃなかったと思ってた。そう思いたかった俺の勘違いだったのか。失恋したのか、俺。って思ったら悲しくて、目を片手で塞いではぁーって深くため息を吐くと、余計気分が落ちていく気がした。俺が好きと伝えた時の反応が、好感触だなんて勝手に思って、俺、何してんだ。勘違いも甚だしい。考えていたら「おい、仙道」なんて越野の声がして、俺は目から手を離して越野に視線を落とすと、越野は「見てた?」なんて気まずそうに俺から視線を逸らした。






「ばっちり」





「田中とは、何もない。断言できる。」





「越野は、好きだろ」





「は?」





「見てればわかるよ」






「...」






越野は否定せずに黙ったけど、真剣な顔して俺に視線を戻すと「だったら何だよ。俺に譲る、とでも言うのかよ」なんて越野が言うもんだから、俺は「そんなわけないだろ」って目を細める。それと同時に越野がため息まじりに笑って「お前ら本当、俺を巻き込むんじゃねーよ」なんて言って俺の腕をバシッと叩いた。






「田中が泣くのなんて、お前のことだけだよ。仙道」






「なんだよ、それ...」






「田中はお前のことしか、見てねーってことだよばーか」







「つーか監督怒ってたぞ」って越野が言ってたけど、俺は越野に言われたことがよく分からなくて、黙ったまま背中を向けて歩き出した越野を見つめる。すぐに越野が俺が歩いてないことに気づくと、振り向いて「今から追いかけるなら、監督に上手く言っとこうか?」なんて眉を寄せて笑う。俺はその言葉にふっと笑って「いや、俺が冷静じゃいられなくなりそうだから、今はやめとく」なんて眉を寄せて歩き出した。






「越野」





「なんだよ」





「越野っていい奴だな」






「そーだろ?俺はいい奴なんだよ」






「あはは、そうだな。でもズボン前と後ろ反対だぞ越野」






「ばっ!?早く言えよ!!!」






会って話して
(田中にキスして抱きしめたい)





その日の夜、かけた電話に田中が出ることはなくて、俺は明日田中に直接会いに行こうかな。なんて考えて、手に持ってるバスケットボールを人差し指で支えて指回ししながら、深く息を吸った。





(田中に、すげー会いたい)







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