金曜日の放課後、なんだかガタガタした音がするもんだから目が覚めた。そこで驚いたのは俺の隣に知らない女子がいて、俺は驚いて小さく「うお」なんて声を漏らす。その声で横で寝ていた女の子が「...ん...」なんて眉を寄せて、眩しそうに目を開けた。誰だこの子、いつから俺の隣にいたんだ。なんて頭にハテナを浮かべる俺に、その子は「おはようございます。仙道先輩」なんて笑いながら目を擦る。






「おはよう。...いや、そうじゃなくて君、誰?」






「仙道先輩がここに居るって噂が流れてて、来たらほんとに寝てたんで私も寝ちゃいました」






「仙道先輩の隣に!」きゃー!なんて声を出そうなほどに嬉しそうな顔をしたその子は、上半身を起き上がらせると俺の上に馬乗りになっていく。馬乗りになってすぐに俺の顔横に手を置くと「私、仙道先輩がすごい好きなんです」って笑いながら言って俺を見つめた。おー、積極的だな。なんて感心してる俺は、近づいてきたその子の唇を反射的にバシッと手で押さえる。なんだか田中みたいな事しちゃったな。なんて思って少し笑えて、俺は「駄目だよ、キスは大切な人としないと」って眉を寄せながら俺の上になったその子を退けるように上半身を起こした。






「仙道先輩が、私の大切な人なんです!」






「そっか。残念だけど俺の大切な人は君じゃないんだ」






「仙道先輩が好きなんです!」






「ごめん、俺、今すごく好きな人がいるから」






「それでもいいですから!」







「抱いてください!」なんて言ってくるその子は、俺に抱きつくみたいに腕を回してきて、俺は困って眉寄せながらその子を引き剥がすみたいに腕を掴むと、その子は俺にしがみつくみたいに腕に力を入れる。うーん、困ったな。これが田中だったらすごく嬉しいんだけど...なんて馬鹿みたいに田中を思い出して、俺は少し口元が緩んでいくのを感じた。






「そう言うのは大切な人としないと、意味ないんだ。だから俺は君を抱かないし、君は君を大事にしてくれる人に抱いてもらいな」






「...仙道先輩って噂と違うんですね」






「応えられなくてごめんね」





俺が眉を寄せてそう言うと、その子は赤くなった目を隠すように俺から離れて、何も言わないまま立ち去っていった。なんだか自分らしくない言葉を言ってしまったような気がして、俺は顔を両手で押さえて、何小っ恥ずかしい言葉吐いてんだ。なんてはぁーって小さなため息をついたけど、静かな室内に吸い取られるように俺のため息は消えていく。そう言えば、田中と今週会えなかったな。今日の夜、電話してみようか。田中はどんな反応するだろう、また『馬鹿!』なんて言って声を荒げるだろうか。思い出し笑いを少ししながら、俺は廊下に出ると、廊下の端に越野が座っているのが見えて、誰か女子と抱き合ってるみたいだった。あいつもあいつで大胆だな。なんて思っていたのも束の間で、『馬鹿じゃ、ないの』って田中の声が微かに聞こえて、俺の足がピタリと止まる。止まった足と同時に、見えた光景を整理するみたいに頭をフル回転させると、田中が越野と抱き合っている。と言う事実だけしか分からなくて、俺は逃げるみたいに2人がいる方向と反対方向へと歩き出して、角を曲がったところで壁に背中を持たれた。







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