『うん、正直言うとちょっとキモい』






「あはは、なんだそれ。ひどいなー」





『自分で言ったんでしょ』






「うーん、でも本当に田中に会いたくってさ」







そう言った仙道の言葉に私は驚いたようにゆっくりと瞬きを1回する。『本当、どうしたの?なんかあった?』なんて驚いて口から出た私の言葉を聞いて、仙道が私の顔横に手を置いた。つまりは塀と仙道に挟まれて、いわゆる壁ドンってやつをされてるってわかって、無駄に仙道を意識してしまう。ドキドキしてる私の事なんて気にしないみたいに、仙道が私を見つめて少し笑った。







「田中、俺この前田中の一生のお願い聞いたよね?」






『え?う、うん...その説は本当に感謝してるけど...』






「じゃあ俺のお願いも聞いてよ」







言いながら仙道が私との顔の距離を詰めて行って、なんだか街灯に照らされた仙道が酷く厭らしくみえて私は顔から火が出そうなほど熱くなる。お願い?というか、私は一生のお願いを仙道に使ったんだし、仙道は一生じゃないの?これはフェアじゃない。例えば仙道のお願いを聞いたとして、一生じゃなかったからまたお願い。とか言われても困る。なんて頭をグルグル回転させて、私が『それって一生の?ただのお願いなら内容による...』なんて口を尖らせたように言うと、仙道はあははって笑って「そこ、気づいちゃったか」なんて気の抜けた声を出してガクッと顔ごと下に向けた。






『やっぱ一生じゃないんじゃん。なら聞かない』







「一生のお願いじゃないけど、どうしても田中とキスしながらセックスしたいんだ」






『まだそれ言ってんの!?馬鹿じゃないの!?』






言いながら仙道の胸を両手で押して、仙道との距離を取ろうとする私に、仙道が「じゃあキスだけでいいから、しようよ」なんて言って私の両手首を掴んで塀に押し付ける。ちょ、力強い。嘘でしょ、何すんのよ。どんだけキスしたいのよ。他にたくさん女の子とキスできるでしょ...なんて言葉が私の口から出てくることはなかった。何故って、仙道の手を振り解くどころか、私は逆に追い詰められていくみたいに、仙道の唇がどんどん近づいてきて、そんなこと言うどころではなかったからだ。私の唇スレスレまで近づいてきた仙道の唇が、私の唇に触れる前にピタリと止まって、仙道の瞳が私の瞳を捉える。なんだか私は恥ずかしくて、ギュッと目を瞑ると、仙道がフッと小さく笑う声が聞こえた。






「花子、キスしていい?」





『や、やだ!だめ!』




「なんで?」




『仙道は友達だから...キスしちゃだめ』




「でもこの前、1回させてくれたじゃん」




『あれは不意打ちでしょ!もうだめ』





「そっかぁ...」





残念そうな声を出しながら呟いた仙道の吐息が私の顔から離れていくのが聞こえて、私は片目をぱちっと小さく見開く。確かに仙道の唇は私の唇から離れた。離れたんだけれども、私の手首にある仙道の手の力は抜けることがなくて、私は動けないまま、両目を静かに開けると『仙道、離して』って自分の手に力を込める。その瞬間仙道の顔が私の耳に近づいていったかと思えば、「唇以外は、いいの?」なんて言って耳にペロリと舌を這わせた。急に囁かれたことと、耳を舐められた事で私は小さく声を漏らして、仙道の低い声が全身に響いたみたいに、私の背中にはゾクリと何かが走っていく。









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