「そーなんだ」
仙道の短い言葉に私は顔が余計に熱くなって、仙道の表情を確認しようとして目蓋を開けると、仙道は口に手を当ててなんだか恥ずかしそうな、困った様な顔をしていた。『なに、それ』なんて不服そうに眉を寄せる私に、仙道が「なんで急に素直になるかなー」なんてはぁってため息まじりに呟いて、私の身体をぐいっと抱き寄せる。驚いた私は声も出せずに、仙道の腕の中で硬直して、何が起こったのか頭をグルグル働かせた。
「花子、キスさせて」
『な、なんでそうなるのよ...』
「今すぐ、花子とキスしたい」
『馬鹿じゃないの...』
「うん。だから、馬鹿みたいに花子の事ばっかり考えちゃうんだ」
そう言いながら仙道が私の頬に手を寄せて、私が答えを言う前に口付ける。その口付けに驚いた私は、仙道のワイシャツを掴んだのと同時に仙道の舌がヌルリと口内に入ってきて、私は耐えきれずに目をギュッと瞑った。仙道の舌に絡まって、熱くなる様な私の口内が、私の舌が、私の頭を溶かしてく。時折口の隙間から漏れ出る私の甘い声に仙道の腕の力が強くなって、まるで恋人みたいだった。なんで、私にキスするの仙道。あんたの行動と言葉が私を自惚れさせてるのわかってんの?頭で思った事が仙道の舌で絡めとられるみたいに真っ白になって、私はまた仙道のワイシャツをギュッと握りしめる。
『んっ、ぅ...ふっ...』
「...なよ...」
『ハァ...な、に...?』
「俺以外にそんな顔、見せんなよ」
そう言ってまた深く口付けた仙道が、私の体をギュッとまた強く抱きしめて、私の思考を止めるみたいに甘い言葉を吐いていく。仙道、あんたって、本当...馬鹿だね。思った言葉が私の頭からスッと消えて行って、私は仙道に翻弄されるみたいに、絡めとられる舌に意識を集中させた。
夢見心地のキス
(期待させて、私の事どうしたいの)
「土曜日、午前中練習試合なんだ。見にきてよ」
『デートって、それ?』
「いや。練習試合終わったら、ちゃんとデートしよう」
『いいけど...』
「絶対勝つから、見ててよ」
『...変な自信...』
「そりゃー花子が来るんだから、頑張らないとさ」
『あっそ。わかったから、もうそろそろ離してよ....』
「うーん、もうちょっと...このまま」
『仙道の馬鹿』
「あと、もう1回キスさせて」
『...馬鹿』
「それは、いいって受け取っていいのかな?」
『1回だけなら...』
「あはは、本当...可愛い花子」
(仙道の唇、熱い)