「おい」


『...はい?』


「何しとるんや」


『あ、あの...これはちょっと...その、タイミングが悪いと言いますか...』





付き合ってまだ1週間程度しか経っていない俺たちは、仕事のトラブルで怒涛の日々を過ごした後にやっとの思いで週末を迎えた。仕事帰りに打ち上げと称して少し酒を飲んで、「明日休みやし、俺ん家来ぇへん?」と誘った俺の言葉に田中が頬を赤く染めながら小さく頷いて、俺は自分の家に田中をあげた。田中に気持ちを伝えた日以来、そう言うことをした事がなかった俺達は、恋人、として改めて田中が自分の家にいるという事実に酷くドキドキしていて、それを誤魔化すみたいに「先シャワー使う?」なんて言ってソファーに座り込む。田中が先にシャワーを浴びて、俺がその後にシャワーを浴びて、身体を拭く前に軽くタオルで拭いた髪の毛の水滴を取るように、肩にかかったタオルで髪の毛を拭きながらリビングへ向かった。リビングの扉を開けると、田中がソファーにかかった俺のワイシャツの匂いを嗅いでいる光景が目に飛び込んできて、俺は思わず「おい」と眉を寄せながら声をかける。田中はホラー映画さながらにビクッと肩を揺らしたかと思えば、ギギギギギっと首の付け根から錆びた音が鳴るんじゃないかと言うくらいにゆっくりと俺に顔ごと視線を移した。





「お前、ほんまアホやな」


『違います!これは不可抗力です!目の前にあるんですもん!』


「あんなぁ...」




俺ははぁっとため息をついた後に田中に近づいて、田中の後頭部に手を当てると俺の胸に押し当てるみたいに田中の頭をグイッと引っ張った。トンっと軽く俺の胸に田中の頭が当たると同時に『南主任...?』なんて田中の声が聞こえるもんだから俺は思わず「本人おるんやから、アホみたいな事すんな」と、自分で言ってて顔が熱くなる様な甘い台詞を口から漏らした。田中は顔を動かさないまま『は、はい...』なんて言って本当に俺の胸の匂いを嗅いできて、俺は思わず田中を胸から引き剥がす。





「ほんまにするんちゃうわ!何してんねん!」


『え?だって...南主任が本人がいるからって...』





『駄目でした?』なんて眉を寄せて俺を見つめた田中に、俺もなんだか困った様に眉を寄せた。そら、してもええけどやな...なんて言おうとしたけど調子に乗ってきそうなので俺は口をつぐんだ。俺は無言でベッドに田中を引っ張っていって、そのまま押し倒すように田中の肩を押す。それと同時に「そんなんされたら、俺かて...」と言って田中の首元に顔を埋めていく。香ってくるシャンプーの匂いが、俺と同じものを使っているはずなのになぜだか甘く感じて、俺の身体がどんどん熱くなっていくのがわかった。





「確かに、これはあかんわ」


『え?なんですか?』


「田中の匂い、やばいわ」




言いながらちゅっと小さいリップ音と共に田中の首に軽く吸い付いて、顔を上げると田中の少し赤らんだ顔が見えた。なんやその顔、可愛ええやんけ。なんてジーッと顔を見てる俺に『恥ずかしいです』なんて言って視線を逸らした田中に思わず小さく笑って、田中の唇に俺の唇を重ねて行く。軽く触れただけなのに、田中の唇が妙に熱くて、少し離してからまた唇に触れる。数回繰り返すようにキスをして、深くなるみたいに舌を田中の口内に滑り込ませた。熱く濡れた田中の口内を探るみたいに舌を動かせば、田中の甘い声が隙間から漏れ出ていって、俺の手を田中の服の隙間から滑り込ませると、『ひゃ!』なんてびっくりしたような、色気のない声が俺の耳に届く。





『つ、冷たいです...』


「そのうち、熱くなるわ...」


『でも、南主任髪の毛も...っん...』




田中の言葉を遮るみたいにまた唇を重ねて、田中のくびれから徐々に胸へと指をなぞらせていく。「下着、つけてへんの?」と、気づいたみたいに田中を見ると、田中の顔が更に赤くなっていって『だって...すぐ、脱いじゃうかなって...』なんて言って恥ずかしそうに目をギュッと瞑った。アホか、なんやこの生き物。と、心の中で呟きながら「お前ほんま、アホやな」なんて小さく笑うと同時に田中の胸の突起に触れる。同時にそこが固くなっていることに気がついて「やる気満々か」と意地悪く笑えば田中が顔を両手で覆って『南主任が、触るからですよ』と手の隙間から呟いた声が聞こえた。俺はそのまま田中の首に舌を這わせて、徐々に下がっていくのと同時に田中の洋服を胸までたくし上げると、田中の露わになった胸に舌を這わせていく。どんどん甘くなっていく田中の声が、さらに俺の身体を熱くさせていって、胸の突起に舌を這わせると田中の身体がピクリと揺れる。「吸われるんが、好きやったな」なんて言いながら胸の突起を吸い上げると、田中の腰がビクッと揺れて、俺は満足そうに口端をあげていった。





『あっ、南、しゅに...』


「ん?なんや?」


『もう挿れて欲しい、です...』


「は?あかんやろ、やってまだ...」


『本当、もう私...準備万端ですから...』




言いながら田中が顔にある手を下腹部に下げていって、俺は待った。とでも言うように下腹部に伸びた田中の手首を掴んだ。「慣らさんと、痛いやろ」なんて言いながら、田中の手首を離して、スルスルと田中の秘部を目指して手を下ろしていく。下着を避けて田中の秘部を指でなぞると、クチュッと鳴った水音と共に俺の指に田中の愛液が絡んでいった。





「ビチャビチャ、なんやけど?」


『あっ...だ、から...言ったじゃないですか...』


「ほんますぐ入りそうやな」


『あっ、待っ...っ、やぁ...』





田中の秘部を指で数回なぞってから、徐々に田中の中に指を進めていくと、田中がのけぞるみたいに腰を反らしていく。そのまま田中の良いところを擦るみたいに指をグッと押し上げると田中の甘い声が止めどなく漏れ出ていって、田中の甘い声を聞くたびに熱くなってく身体が、止まらないみたいに溢れ出ていく田中に対する好きと言う感情が、どんどん俺を溶かしていくみたいだった。










恋人になって1週間
(1週間しか経っとらんのに、これはあかんな)





「いつまで手、繋いでるんよ」


『いや、ですか?』


「嫌やないけど、家やで」


『だって、その...嬉しくて....』


「アホ、その無自覚なんやめろや」


『あっ、ちょ...』


「花子、好きやで」


『私も好きですけど...』


「なんやねん」


『名前...呼ぶのずるいです』


「お前もその顔、ずるいんちゃうの?」




(ほんま、可愛ええ奴やな)




(2020/10/28)



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