『私の秘密知ったんだから、南さんの秘密も教えてよ』
「は?なんやそれ、勝手に処女って言ってきただけやろ」
『ひど!今日飲んだメンバーに南さんに無理やりヤられた!って言うからね!?』
「アホか!」なんて言ってからまたため息をついて、俺は観念した様に「キス」って小さく呟く。花子ちゃんは俺の顔を覗き込んで『キス?』って復唱して頭にはてなを浮かべる。俺はなんだか恥ずかしくて「8年ぶりにしたわ、キス」って花子ちゃんから視線を外す。
『え?』
「やから、8年ぶりに...」
聞き返されたことが恥ずかしくて眉を寄せながら花子ちゃんに視線を戻すと顔を手で覆いながら、なんだか耳まで真っ赤になっていた。(は?なんでやねん)
「なんで花子ちゃんが赤くなるんや」
『南さんのセカンドファーストキス貰っちゃった!!』
「は?」
なんやそのセカンドファーストキスて、ファーストかセカンドなんかはっきりしてへんし、なんならファーストキスでもセカンドキスでもないやん。なんて俺は心の中でもツッコミながらポカンとしてると花子ちゃんが顔から手を離して嬉しそうに俺を見つめる。
「なんやねん、その顔」
『んふふ、嬉しい』
「おま...ほんまに変な奴やな...」
『ねえねえ、ホテルから出てまた呑みなおそうよ!』
「言うて明日も平日やろ...」
『いいじゃん明日金曜日だし、ちょっとだけ。南さんのこともっと知りたいの』
「ええ、けど...」
なんて言ったのが昨日の夜、そして4月1日の今日。入社式を終えた新入社員が俺のいる営業部に挨拶に来たのが今。俺の目の前には花子ちゃんが新入社員と共に並んで立っていた。
『今日から営業部3課に配属になりました田中花子です。誠心誠意頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!』
挨拶が終わった後に他の社員が「よろしくお願いします」なんて挨拶してる間、俺は開いた口が塞がらない状況で固まる。頭が全然働かないまま、花子ちゃんが俺に近寄ってこそっと『よろしくお願いしますね、南主任。』なんて語尾にハートがつく勢いで俺に笑いかけた。
悪夢の始まり
(南主任ちゃうわボケー!)
「お、なんだ?南と知り合いか?」
『はい、昨日...』
「全然知りません!こんなやつ初対面です!」
『え?ひどーい、昨日は...』
「ほんまに!こんなアホ知りません!」
「知り合いだったら教育は南主任に任せようか」
『はい、部長喜んで』
「お前が!喜んで言うんとちゃうわボケ!」