Chapter 3




 塩鉱に辿り着いたエメリの目に飛びこんできたものは、土埃に覆われた視界と、怪我人を運び出す泥塗れの鉱夫たちだった。応援に来ていたカリィに馬を預け、先行していたエメリの後をヴェイセルが追う。呆けたように立ち尽くしていたエメリの肩に手を置こうとするが、その直前で、少女は凛と背筋を伸ばし、迷いのない歩調で歩き出した。
 礼拝堂は苦痛の呻きに満ちていた。岩塩の女神のまなざしは、寝かされた怪我人の並ぶ床に据えられている。苦悶の叫びの肉塊を押さえ、施療院より駆けつけた修道女が応急処置を行っていた。オロフとリカルドゥスは怪我人の間を縫って歩み、怪我人であった者の枕もとに膝をつき、祝福を与えていた。エメリは司祭と助祭に歩み寄り、助祭に代わって器だけの手を握り締め、安息の祈りを捧げた。 

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