Chapter 1




「では、あの動きは、カトゥルス・アクィレイアとの呼応ではない、と」

 ざわつきはすぐに厳粛に取って代わられ、淡々と問答は続いてゆく。

「無論だ」

 首肯するウォルセヌスの背後の扉、

「証人を」

 そこから現れたのはキィルータにて見慣れたあの帝国官吏。その瞬間、デシェルト総督たる青年が得たのは予想が現実となったという確信。
 総督の傍らに立ち、証人たる官吏はまっすぐに判事を見上げる。

「この者がカトゥルス・アクィレイアと繋がっていたことは間違いありません。キィルータにて、私は何度も鳩が行き交う光景を見ましたし、私を使って帝都を内部から崩壊させようともした。帝国の北東の国境を護ると見せかけ、それによって北方異民族の支持を勝ち取り、陛下を玉座から引き摺り下ろした後、手を組んでいた兄公爵をすら廃して自らが皇帝となり帝国を治めよう、と」

 ふ、と、ウォルセヌスの口許に失笑が過ぎる。

「もしそうであるとするのなら、万人に判るかたちでその根拠を提示していただこう」

 判事が頷き、傍聴人がざわついて。

「では、それについて証人――――」

 傍らを見遣った総督は、官吏の手に持ち上げられた震える銃口を正面に捉えて。
 判事の背後の扉が開け放たれると同時、被告の背後の扉が開け放たれると同時、そこから現れた漆黒を纏う女の耳朶を、そこから現れたプラチナブロンドの青年の耳朶を、乾いた銃声が叩きのめした。

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