Chapter 5




 ヴォルガ河の中洲における、騎士団と公国軍そして傭兵隊との混戦は、傭兵が騎士に刃を向けると同時に公国軍にも白刃を振るったことで更なる混戦へと縺れこむ。それは結果として騎士団と公国軍が傭兵隊を挟撃するという奇妙な状況を生み出した。
 後に密書が発見されたことにより発覚する傭兵隊上部とアレス王国とのつながりなど血と剣戟に塗れる当事者たちは知る由もなく、この理解に苦しむ状況を打破し、生き残ることにすべてを懸ける。

「今こそ、我らが神に、我らの婢たらんことを示せ!」

 泥を屍を蹴散らし、馬を繰り剣を掲げ、フィアナ騎士団団長ベルトラン・ダン・マルティンが叫ぶ。

「すべては公国のために。諸君らが護るもののため、その身をこの勝利に奉げよ!」

 血糊に濡れ脚を負傷し、それでも馬上より敵を斬り伏せながら、カルヴィニア公爵アロルドが吼えた。
 絶えることのない剣戟と絶叫、血の色を薄めきれず屍に滞り蟠るヴォルガ河の流れ。
高く高い蒼穹の下、戦いの終わりは近い。

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