Chapter 5
「どう思う?」
艶めいた紅の唇から投げられた問いが、その繊手に落ち着く煙管の紫煙にまぎれてゆく。
その場所に満ちるのは静寂だけで、この街が親しむ極彩色の喧騒は程遠い。
「フォルトゥナート・ヴァースナーは傭兵だ。ヴァースナー一門ほどの傭兵隊での隊長格、依頼は確実に果たすだろう。だが、それだけで終わるかな?」
仄暗い橙の灯りに豪奢な金髪を煌かせるその女の、長椅子に横たわるその様はしどけなく気だるげで、卓を挟んだ椅子にちょこんと腰掛けているエレは瞬きを繰り返しながら不思議そうに小首を傾げた。
- 153 -
[←] * [→]
bookmark
Top