しんしんと、降る雪の音が聞こえてきそうなほどに静かな夜。
互いに何をするでもなく、外を見つめている。
二人ともにお喋りなほうではないのでこういう沈黙は多い。ただ、居心地はとてもいい。心がゆっくりとほどけていくような、優しい沈黙。
「‥‥‥龍蓮」
雪に照らされた端正な眼差しが、躊躇いもなく近づいてくる。
白い頬が綺麗だな、と思って手を伸ばす。
でもその手が届く前に龍蓮のすべやかな手が自分の頬に触れて、目を閉じて、そして口唇に柔らかなものがそっと押し付けられたのを感じる。
頬に触れていない、空いたほうの手が、そっと指を探して、捕まえられた。
「綺麗な夜だ」
口唇が離れて、龍蓮が真顔でそんなことを言ったのがなんだかおかしくて笑みが零れた。
「愛している」
発した言葉を追いかけるように口付けられて、床と背中合わせになった。さっきよりも、激しく、優しい。
一瞬離れた隙に、息を吸って、またくらくらとした感覚に溺れる。
「龍蓮‥‥‥そんなに、心配するな」
見下ろす瞳がほんの少し濡れていて、指を伸ばす。
「月華‥‥‥」
「私も、同じ気持ちだから」
途端ににっこりと子供のような笑顔になった龍蓮が、また近付く。
「君を愛している」
「‥‥‥うん」
子供のように頷いた君にまた口唇を落とせば、白い頬がほんのりと赤く染まった。
君はいつもはっきりと言葉にはしてくれない。
だからこそ何気ない仕種が、こんなにも愛おしい。