今年も残り少し。愛しの旦那様(予定)は今日も今日とて仕事で帰らないのだろう。
寒い中頑張っているであろう彼を想ってまた料理を再会する。
「はーやくうこーいこーい、だーんーなーさーまー。‥‥‥なーんて」
口ずさんでみてちょっぴり切なくなった。
「あ‥‥‥」
ごーん、と新年を知らせる鐘が遠くで鳴った。
「明けましておめでとう」
お節を作る手を休めて、一人ぽつりと呟く。
その時ぱっ、と視界が暗くなった。ひんやりとした手の感触。
「え?」
驚いて振り返ると悪戯が成功したようにニッカリ笑った燕青が立っていた。
「明けましておめでとう。今年もよろしく」
「やだ、幻覚?」
「ひっでーなー」
幻覚じゃない証拠。
そう言って燕青は彼女の額に口付けた。
「ほっぺも冷たい‥‥‥明けましておめでとう」
燕青の頬を軽く引っ張って、照れ隠し。歌を聞かれなくてよかった。
「目ぇ閉じて」
「はいはい」
彼女は少し背伸びをして、燕青は少しかがんで互いに近付く。
今年初めての優しく柔らかな感触に、しばらく浸る。
口唇を離すと、目が合った。
「今年もよろしくね」
自分のよりも小さな背中を抱き寄せて、燕青は二回目の口付けで答えた。
二回目の口付け
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