「えんせー、朝だよー、起きなさーい」
合図も無しに勢いよく扉を開き、ずかずかと室に入ってきた月華は、これまた勢いよく布団を剥いだ。
「朝だって‥‥‥ちょっ、何だってあんたは半裸で寝てんのよっ!」
「んあ?オハヨーサン。おやすみ」
寝ぼけ眼でもぞもぞと布団を手繰り寄せてまるくなった燕青を、不覚にも『可愛い』と思ってしまった月華だが、ふともうすぐお昼なのを思い出して布団の上からばふばふとぐーで叩く。
耐え兼ねたように、燕青が月華に向き直る。
「なんだよー。公休日くらいゆっくり寝かせてくれよ‥‥‥ってなに顔赤くしてんだよ」
「だからなんで半裸なのよっ!」
(はんら?ハンラ?‥‥‥あ、半裸か)
自分の姿を見ると半裸というよりは、ただたんに夜着が一般より大きくはだけているだけなのだが。
「俺、元気な寝相だからなー」
「もうっ、とにかく、お昼になっちゃうわよ」
今日静蘭と出かけるんでしょ?
その問いにますます起き上がる気を無くした燕青はまた布団を被った。
「こら!」
「月華がちゅーしてくれたら起きるぜ?」
「なに言ってんのよ。そんなことばっかり言ってると静蘭に起こしにきてもらうわよ」
半裸は照れて口付け自体には照れない月華に内心笑いつつも、もそりと体を起こす。
むしろ静蘭が来たら一生起きられなくなりそうだ。
「それだけはカンベン。うおー今日もいい天気だなー」
寝台から立ち上がってかるーく伸びをした燕青にスタスタと月華が近づいてくる。
互いの距離が拳二つ分くらいのところでピタリと止まった。
「ん?」
「起きたからご褒美あげる」
結んでない髪を引っ張られ軽く屈む。ほっぺたに柔らかい、甘い感触がして、次いで離れていく、少しだけ照れた月華の横顔が見えた。
「おはよう」
真正面ではにかんだように言われ自分から言い出したくせに燕青も少し照れて笑った。
「オハヨー」
寝坊の得策