「あっつー」

「同意」

「あちぃー」

「どーい」

「とけそう」

「‥‥‥」

「あれ?今度はドーイしてくれないの?」

ミンミンミンミンと外では飽きもせず蝉が鳴いている。どーせ七日しか生きれないんだからもっと別のことしたらいーのに。

「もう返事をするのも疲れた」

「ふーん」

一番風通しのいい板の間の室に寝転がっている俺達は、地面に落ちた蝉より無様に違いない。噴き出した汗が額を滑り落ちていった。全然涼しくならない。

月華のほうにちらりと視線を向けると、手巾で顔の汗を拭いていた。

「タンターン」

「あー?」

「世間ではさ、」

「うん」

ごろりと彼女が寝返りをうって、俺と向き合った。暑さでおかしくなったのか(元からかもしんない)へへ、とにやけた。とけそうだ。

「こーんな暑い中でもひっつき合ってる男女がいるんだよー」

「はあ」

ごろごろと転がって、月華がぴたりと俺にくっついた。やばい、近い。

「やっぱり暑いねー」

「おまえも意外とバカだよなー」

「タンタンのが移った」

「‥‥‥意外と失礼だよね」

くっついたところが周りよりも熱くなって、じっとりと汗が浮かんでくる。多分冷や汗も半分混じってんじゃないかな。俺だっていちおー男だし、くっつかれればそれなりに欲が出る。

「暑いよー」

「じゃあ離れてよ」

「めんどくさい」

「どーい」

「でも暑い」

「ほんとバカだろ」

いよいよ俺は手のやり場に困って、ちょっとだけ空中にさ迷わせて、やっと月華の上に置いた。よけい暑くなったうえ、精神的に疲れた。

「うわー、余計暑くなったね」

「月華がくっついたから」

「違うよタンタンがくっついからだよ」

「あーもう‥‥‥何がしたいわけ?」

この暑いのにベタベタベタベタとくっついて。嬉しいけど嬉しくないし。暑いし。

「えー?」

月華がちらりと視線だけをこちらに向けた。

「タンタンとくっついてたいだけだけど?」

「‥‥‥」

かわいいからまあいいか。




ある夏の日の
マーイッカ




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