「清雅きゅんきゅんママにきゅんっ」
「ほお、おまえがそんなに赤点取りたいとは知らなかったな」
「わー!うそウソ嘘!冗談だって!」
「‥‥‥コーヒー淹れてこい」
「ブラックですか!」
「当たり前だ早くしろ」
当然のように顎で人を使う清雅だけど、テスト前の今日ばかりは逆らえない。
こんなに教え方が上手な人間が友達(?)で良かったと思う反面、自分のパシられように我ながら不憫になってくる。
「はいどうぞ」
「ん」
カップを渡してから採点をお願いしたプリントを手に取る。うーん、相変わらずペケが多い。
やり直しをしようとペンに手を伸ばしたとき、清雅が小さくむせた。
「おまっ、俺に恨みでもあるのか」
「?」
「これ飲んでみろ」
「はあ?」
差し出されたカップに口を付ける。と同時にじわじわと苦味が襲ってきた。
「にがっ!なにこれ」
「それは俺の台詞だ」
多分考えごとをしながら淹れたから粉が多過ぎたんだろう。
「淹れなおしてくるね」
「待て」
立ち上がろうとしたところに、手首を掴まれて座らされる。
「清雅?」
「飲むから、ここに置いとけ」
ふい、と目を反らされたまま呟かれて、自分の頬が緩むのが分かる。
たまーにこういうことをされるから嫌いになれないんだよ。
「にやにやするな」
「えへへ、無理」
ちらりと見える優しさが、