「あーもうしつこいな!」

もともと癖の強い髪を掻き回してさらにぐちゃぐちゃにする。

「ええ?そうかなあ?」

あくまでとぼけた言い回しに、若干苛立っていたのは事実だ。

「俺は見ないって言ってるだろ!」

「じゃあ一人で見てくる」

「ああもう待てよ!」

そう言って乱暴に掴まえた手首が思いのほか細くて離し損ねてしまった。
他人の身体なんて触る機会はそうそうないので深く考えたこともなかったけれど、自分とこんなに違うものなのかと驚いた。

「あのー、スルガくん?」

「え?」

「もう少し力を弱めてくれると嬉しいかな、なんて」

なんのことかと混乱しかけて、そんなもの一つしかないことに思いあたる。

「あ、ごめん……」

そう、細かった。自分だって体格に恵まれているほうじゃないが、なんというか、元から違うモノなのだと再認識した。
細い手首、スッキリした首筋、柔らかそうな頬。
よくよく見ればこんなにも違うのだ。意識さえしてしまえば、コイツだってケイやタマキと同じカテゴリーに入る生き物なのだ。

「……ごめん」

「え?なにが?」

「ちょっとしつこかった。悪かった。ごめん」

「ああ……」

沈黙を怒りだと感じたらしい。直前までのやり取りをすっかり忘れていた。

「いいよ。気にしてない」

「よーし、じゃあ一緒に見に行こう!」

「だああああ!そうじゃないだろ」

意識してしまったせいで、さらにこのやり取りの原因が言い出しにくくなってしまった。

「ドーベルマンからラビッツが受け継いだという秘密のパワーアップ資料、私にも見せてよ!」

「嫌だ!ダメだ!」

「えー?なんでよ!」

掴んでいた手を掴み返されて、やっぱりその手のひらの小ささに驚いた。ああもう、余計に教えるわけにはいかない。

「だってあれはなあ!」

AVなんだぞ!



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