言い争う3人を尻目に、私が立ち尽くしているといつの間にか女の人が生徒会室に入ってきていた
私の背後に立って馬鹿3人を白い目で見ている凛々しいこの女の人は、確か雑賀孫市先輩
鶴ちゃんは知り合いみたいで「孫市姉様」と呼んでいるけれど、校内でも有名な美女で公式の姉御な方で、私みたいなちんちくりんからしたら憧れ以外の何ものでもないお姉様だ
その雑賀先輩が何故、生徒会室に


「お前が尼子なまえだな」

「あ、はいっ!」

「お前を毛利の襲撃から救ってやってくれと元親に頼まれて来たんだが…これは何だ?」

「…私にも分かりません」


憧れの雑賀先輩を私のヘルプに出してくれるなんて、長曾我部先輩もいいところがあると少し感動したけれど、今はそれよりこの状況だ
雑賀先輩は3人のやり取りを呆れた目で見て「カラス共が」と小さく呟いた


「…まぁいい
むしろお前が無事そうで何よりだ、今の内に、」

「貴様!なまえを何処へ連れて行く!!」


雑賀先輩に腕を引かれ生徒会室を後にしようとした瞬間、さっきまで下らない言い合いをしていた石田君が刹那の速さで私達の前に立ちふさがった
キッと雑賀先輩を睨み付ける石田君の目はそりゃもう怖い
だけど雑賀先輩は全く動じない


「お前達の所為でなまえが困っている様子だったから、ここから連れ出そうとしたまでだ」

「なまえが…?」


雑賀先輩を睨んでいた石田君の目が私に向けられたので、私はアハハ、と思いっきり顔を引き攣らせて笑ってしまった
だってもう石田君って人が分からなさ過ぎる
真面目なのかふざけてるのか、私の事が好きなのか嫌いなのか、もう全然分からない
某美少女戦士の有名な歌で言うところの「思考回路はショート寸前」だ
だけどこの場合「今すぐ逢いたいよ」なんて乙女な歌詞は続かないけれど

雑賀先輩の登場で、やっと言い合いを止めた晴久と毛利先輩も私に視線を向ける
少し申し訳なさそうな顔をした晴久とは正反対に、毛利先輩はあからさまに冷たい視線を投げかけて下さった(いつもの事だけど)


「毛利、今日のところはなまえを見逃してくれ」

「雑賀、貴様長曾我部に雇われたか」

「まぁそう言う事だ
我らを敵に回す程お前は愚かな男ではないだろう?」

「…フン、好きにしろ
ついでにそこの2人も連れて行け、邪魔で仕方ないわ」

「あぁ、そうしよう」


毛利先輩はそれだけ言うと椅子に座って私達には目もくれずに、机の上の書類を纏め始めた
それを確認してから雑賀先輩は「行くぞ」と言って私の肩を押してくれて、私と雑賀先輩の後を石田君と晴久が付いてくる形で生徒会室を後にした


「…ふぅ、助かりました
ありがとうございました…雑賀先輩」

「礼は要らない
私は元親に頼まれただけだ」

「それでも凄く助かりました
少なくともそこのピンクのバンダナ野郎よりは」

「…」


横目でキッと晴久を睨むと、流石に自覚はあるのか思いっきり気まずそうに目を逸らした
その流れで石田君を窺うと、石田君は何だか複雑そうな、難しい顔をしている


「あ…石田君も、一応ありがとう
部活中なのに助太刀(?)してくれて
もう戻ってくれて良いよ、伊達先輩に怒られそうだし」

「貴様は、」

「え?」

「…いや、何でもない」


何か言おうと口を開いた石田君は、眉根を寄せて難しい顔をしたまま私を凝視してから、そのまま背を向けて道場の方へと戻っていってしまった

本当に石田君って不思議な人だ
石田君に対する私の感情は、恐怖がまだ8割を占めているけれど(先入観って怖い)あとの2割は何だかもわもわした変な感情が占めている


「ではな、私も行くぞ」

「あ、はい!ありがとうございました」


雑賀先輩に軽くお辞儀をして別れると、その場には必然的に私と晴久の二人きり
まだ反省しているかな、と思ってその表情を窺えば、これまた何だか難しい顔をした晴久がじっと私を見ていた


「何よ?」

「いや…何つーかお前、毛利とか石田とか厄介な奴に目ぇつけられたもんだよな」

「本当にね
まぁまず双子の兄が一番厄介な気もするんだけど」

「何故だ!?
お兄ちゃんはこんなにもお前を愛しているのに!!」

「それが厄介なんだよ馬鹿兄貴」


もう本当に今日は疲れた
家に帰ったら晴久を隔離してゆっくり休もう

それより本格的に厄介な事になってきた
明日からも石田君と前後の席なのは変わらない訳だし、今日は逃げれたけれど、毛利先輩のお怒りがアレで収まったとは思えない…というかむしろ悪化したんじゃないだろうか
……ヤバイ



お母さん、お父さん
なまえはこの学校に通う事に命の危険を感じるので早急に転校致したく存じます





今、すぐにでも








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