「貴様、これは一体どういうつもりだ」

「貴様に答える義理はない」

「…」


何だかんだで辿り着いた生徒会室
もう会議が終わっていたらしく閑散とした室内にはただ一人絶対零度の空気を纏った毛利先輩が仁王立ちして待ち構えていた
正にラスボス、さすが3の黒幕と言われるだけありますね先輩

私の横には今日知り合ったばかりで色んな衝撃を与えてくれた石田三成君が毛利先輩の「にらむ」攻撃にビクともせずに毅然とした(むしろ若干の殺意さえ窺える)態度で立っている
そして私はというと出来れば今すぐここから逃げ出したい、晴久に砂に潜って逃げる方法を伝授してもらいに行きたいと、そんな事ばかり考えていた


「我は貴様になど興味は無い、そこの愚鈍な女を置いて早急に去れ」

「貴様こそ何度も私の女に手を出そうとは愚かにも程がある」

「…貴様の女…?」


珍しい事に毛利先輩が驚いてまん丸な目で私を見た
いやでも一番驚いたのは私だから
まさかのハードボイルドな発言にギョッとして石田君を見上げてみると、石田君は相変わらずCOOLな顔で私を見下ろした


「石田君石田君、私いつ貴方の女なんてポジションに配置されたのかな」

「友人も女も同じようなものだろう」

「いやそれ凄く違うから!
何?頭良さそうに見えて馬鹿なの?ねぇ石田君馬鹿なの?」

「貴様、私を馬鹿呼ばわりとはいい度胸をしている
そもそもこの男に良い様に扱われている貴様が悪いのだ!」

「ええ!?一体何の話?
石田君って私の味方じゃなかったの!?」


いつの間にか石田君の攻撃対象が私にすり替わってる!
ねぇ私間違った事言ったかな!?ねぇ言ってないよね!?
あ、もしかしてこういう状況のこと四面楚歌って言うのかな?
わぁすごく勉強になった…ってそうじゃなくて誰か助けてぇえ!!


「呼んだかなまえっ!」

「お兄様あああああ!!」


ズザザーっと廊下をスライディングして現れたのは、ピンクのバンダナが目に眩しい我が兄晴久だった
このタイミングで現れるあたり、もしかしたら本当に双子にはテレパシー能力が備わっているのかもしれないと思う


「何ぞ、愚か者の更に愚かな兄ではないか」

「毛利…テメェなまえに何をした?」

「吠えるでないわ、我は未だ何もしておらぬ
今そやつを困らせていたのは我でなくそこの愚か者よ」

「ん?石田じゃねぇか…何でお前が」

「答えるまでもない、私の女がこの男に付回されていたから斬滅しに来たまでだ」

「「私の女」…?」


何だか石田君の言ってる事がもう半分くらい理解出来なくなってきた
私、毛利先輩に付回されてたっけ?いやそれに近い物は確かにあったけど、それじゃあまるで毛利先輩が私のストーカーみたいじゃない

晴久は石田君の指す「女」を捜してキョロキョロし出すし、毛利先輩は「貴様、我を愚弄するか…!」と奥歯を噛み締めて石田君を睨み付けている
あぁ、なんていうカオスな空間
でも生憎今の私にこの状況を打開する方法なんて見当たらない
頼むから晴久、私に砂に潜って逃げる方法を伝授したまえ


「おい石田、お前の女ってどいつだ、まさかなまえじゃねぇだろうな」

「そのまさかだが何か問題があるのか」

「お前…!!問題も何もなまえはお前の女じゃねぇ!」


晴久…!!
今は晴久がいつもの5倍くらい(当社比)輝いて見えるよ!
あのジェイソン石田に向かって怒鳴りつけるなんて、3で専用台詞でフルボッコにされてた尼子晴久とは思えない勇ましさだよ…!!

私が咄嗟に晴久の後ろに隠れると、さっきまで沸々と怒りの炎を燃やしていた元炎属性の毛利先輩が、晴久に同調するように冷静な視線を石田君に投げかけた


「そうだ、此奴は我の駒ぞ」

いや違うし

「何を言うか、紛れもなく私の女だ」

だから違うって言ってるじゃない

「いや、俺の嫁だ」

「ちげーよ妹だよ馬鹿!!何でそこでノるの!?意味わかんないんですけど!?」


まさかの嫁発言につい思いっきり晴久の後頭部をグーで殴ってしまった
我が兄ながら本当に馬鹿だなコイツ
あほの子ポジションはジャッキーもどきだけで充分だっつーの

後頭部を打たれた所為か思いっきり鼻血が出てる晴久は、私の突っ込みにはビクともせずにそのまま毛利先輩と石田君と「我の駒」「私の女」「俺の嫁」をギャンギャン言いあっている
私を巡って言い争っているみたいだけど、間違っても「やめて!私の為に争わないで!」っていう乙女ゲーな感じの逆ハーみたいな甘い雰囲気じゃないし
何あの人達、馬鹿なの?ねぇ馬鹿なの?





「どうやら間に合ったようだな」

「え…あ、あなたは…」








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