▼スキとキスの法則 「三成君、好きだよ」 と言うと 「知っている」 と返ってくる。 このやり取りがたまらなく好きで、私はいつも三成君が真っ赤になって「うるさい!」と言うまでしつこく言い続けたりする。 その真っ赤な顔が大好きで、うるさい!と言いながらもちょっと嬉しそうな口元とかも大好きで、とにかく私は三成君が大好きなんだけど、だけど、何でだろう? 最近何かがおかしい。 たまに無性に訊きたくなる言葉がある。 「三成君は私のこと好き?」 だけど何となくこの言葉は言い難い。 重いと思われそうだし、まるで私が三成君のことを信じていないみたいで嫌だ。 信じてないんじゃなくて、不安なんじゃなくて、ただ何となく、三成君の言葉で「好き」と言って欲しいと思う時がある。 ただそれだけのことなんだけど。 「三成君、」 「何だ」 「……私、三成君のことが好きなんだけど」 「…今更それがどうした」 「…ううん、何でもない」 うん、そう返されるだろうなぁとは思ってた。 三成君の何も無い部屋に持ち込んだ私用のクッションを膝の上に抱えながら、どうしたものかと一人悩む。 三成君は何か難しそうな本を読みながら、さっき私が淹れたコーヒーを飲んでいる。 こういう何気ない普通の時間が好きだと思う。 人嫌いの三成君が、自分の私的空間を私と一緒に過ごしてくれているんだから、これだけでも私が三成君にとって特別なんだと感じさせてくれる、これだけで幸せだと思う。 それなのに急に言葉が欲しいなんて思う私は、もしかしたら物凄い欲張りなのかもしれない。 「…なまえ」 「ん?どうかした?」 「どうかしたのは貴様の方だ。 何か言いたいことがあるなら言え」 三成君は、こういうところがある。 何も見ていないようで、ちゃんと見てる。 たまに「秀吉様!!」ってなるともう何も見えてないけれど、普段はちゃんと私のこともしっかり見てくれている。 そして気にかけてくれる。 あぁ、やっぱり好きだなぁ。 「ううん、何でもないんだけどね」 「けど、何だ」 「三成君に好きって言って欲しいなぁとか欲張りなこと考えてただけ」 「なっ、……」 嘘を吐くのは嫌だから敢えてハッキリ言ってみた。 これで「下らん」とか言われても仕方ない、まぁそれはそれでいつもの三成君だから私も今更そんな一言で傷ついたりはしない。 だけどちょっとだけ期待もしていたりする。 三成君は当惑したように眉間に薄く皺を寄せて、私をじっと見つめている。 どうも三成君は困ってしまったらしい、そう思って私が「ちょっと思っただけだから、そんな真剣にかんがえなくていいよ」と付け加えたら、何故か三成君は更に深く眉間に皺を寄せて考え込み始めてしまった。 「…言っていないか」 「え?」 「私は、貴様に…いつも言っていなかったか」 「へ?う…うん。 告白して貰ったときくらいから聞いてないと思うけど」 「……」 至極真面目な顔の三成君に対して、私は間の抜けた声を出して驚いてしまった。 だって三成君が、まるで普段言っているじゃないかと言わんばかりの語調だったから、私の方が何か間違った事を言ったみたいで当惑してしまったのだ。 三成君はまた深く考えこんでいる。 もしかして三成君は本当に普段自分が私に好きだと言っているものだと思っていたんだろうか。 「……」 「……」 妙な間が私達の間に流れる。 三成君は神妙な顔で俯いていて、私はそんな三成君をぱちぱちと瞬きを繰り返しながら凝視している。 このままじゃ拉致が開かない、きっとおかしな事を言った私が間違ってたんだ。 話を変えようと思って「三成君、コーヒー冷めるよ」と声を掛けると、三成君がすっと私に手を伸ばして近づいてきた。 「み、三成君?」 「なまえ、」 「なに?」 「…」 「…三成君?」 私の頬の横、耳元にそっと手を宛がって、何か言おうか言わまいか悩むように難しい顔をする三成君。 その距離が近くて、もしかして言ってくれるんじゃないかなって期待で、私はもうどうしようもないくらいドキドキする。 私に触れている手に一瞬力が入り、私がびくりと反応するのとほぼ同時、三成君がすっと私に顔を寄せて、そのままそっと、唇が触れ合った。 初めてじゃないのに、まるで初めてのキスみたいにドキドキした。 深く交わるわけでもない、そっと極力優しく触れる柔らかな感触が、何度も角度を変えてそっと唇に触れ、そのまま頬にまで口付けられていく。 私はもうどうしようもなくて、ただ心臓を激しく鼓動させながら三成君のなすがままに従うしかなかった。 「なまえ、」 三成君の少し薄い唇が、私の耳元を掠める。 名前を呼ばれただけなのに馬鹿みたいに緊張してしまう。 「…なまえ、」 言葉を探すように、少し困ったように三成君が私の名前を呼ぶ。 あぁもう、これ以上は私が耐え切れない。 「三成君、」 「…何だ」 「好きだよ」 「…知っている」 「うん、私も知ってる。 ありがとう、やっぱり大好きだよ」 「…あぁ」 きっと、三成君にとっての「好き」は言葉にするものじゃないんだと思う。 私は言葉にして伝えたくなるけれど、皆が皆そうとは限らない。 よく考えたら三成君はいつも私に「好き」と言ってくれていたんだと思う。 さっきみたいに優しく触れてくれるとき、下らない私の言葉に構ってくれるとき、私の「好き」を知っていてくれるとき。 三成君が私を好きでいてくれて嬉しいと思う。 だから私はたくさん言葉にして三成君に伝えたい。 でもたまには三成君みたいに言葉だけじゃなくて、行動で示すのもいいかもしれない。 「三成君、」 「なん、……っ!!」 スキとキスの法則 ********** 粋様ほか匿名様 三成現代甘甘とのことでこんな感じにしてみました! ど…どうでしょうか… ちょっとクセのある独特の雰囲気なのでもしかしたらご想像のものと違うかもしれませんね^^; その場合はまたご遠慮なくお申し付け下さいませ! また別パターンで挑ませて頂きまする! 因みにこれ、個人的には甘甘というより激甘なつもりです… マカロンにガムシロぶっかけたくらいのつもりです… もっと砂糖を盛り込めぇぇぇぇと言うご要望も24時間承って御座います では、この度は企画ご参加&リクエストありがとうございました! 巡 |