――宇都宮駅新幹線待合室

夕食をご馳走になり、お土産もきちんと買った二人は最終の新幹線を待っていた。

「いやー、楽しかったですね!!」
「そうだな。小虎が俺になついたのは驚いた」

……妃、と小虎の両親から、物凄い感謝を受けた二人は、宇都宮餃子の美味しいお店を小虎の父に紹介して貰ってご馳走になった。小虎は母親にべったりくっついて離れなかったが、そのうち落ち着いたのか、水餃子が美味しい二軒目で坂城に「さかじょーおにーちゃんは、なんさい?」「どこにすんでるの?」「ふたりはかっぷる? おとーさんとおかーさんみたいにふうふなの?」と質問攻めをして、律儀に坂城は一つ一つ噛み砕いて答えていた。
それが小虎にはすごく親切の見えたのか、いつも子どもに避けられる坂城が小虎が懐かれたのだった。

「おにーちゃんおにーちゃんってすごい懐かれてましたね」
「一人っ子だから、年上が珍しかったんだろうな」
「そんなことありませんよ。坂城さんが、小虎くんでも分かるように言葉を選んで喋ってくれたからですよ」
「俺の言い方は堅苦しいって前に友達に言われたからな。子どもはそれを感じ取って怖いって思うんじゃないかって」
「それねー。坂城さん怖くないよー!!」
「別に子どもは苦手だから好かれても……」
「可愛いじゃないですか〜。うち結婚したら、三人くらい子ども欲しいですよ〜? 兄妹って良いものですし」
「……それは」

坂城がからかいと本気まじりに、俺との? と聞こうとしたとき、新幹線到着のアナウンスが鳴り響いた。

「あ、来たみたいですね」
「そうだな」

坂城は問いを飲み込んで、秋穂と手を繋いで立ち上がった。終電の新幹線を待つ人は、坂城と秋穂しかいなかった。疲れたが良い旅になった、と坂城は思う。秋穂も同じなのか「うち、また坂城さんと旅行行きたい!」と笑って言う。

「そうだな……次は泊まりでな」
「……うん」

坂城が秋穂の指に絡め手を繋ぎ直し、下心を隠さず言うと秋穂から照れずに返ってきた。それに驚くが、秋穂は誤魔化すように「どこが良いですかねー!」と坂城に言った。

「そうだな……東京来るか?」
「行く! 行きたいところいっぱいあるんですよ!」

ニコニコ笑いながら、言う秋穂の真意は見えない。でも、坂城は秋穂が自分に歩み寄ってくれただけで、それだけで嬉しかった。

「楽しみにしてるな」
「はい!」

次の約束も出来て嬉しそうな秋穂は、新幹線に乗った瞬間、坂城の肩を借りて寝入ってしまった。
その無防備な寝顔を写真に収め、額にキスをしたあと、坂城は携帯で検索を始めた。

「はてさて……俺のところに来るなら、新幹線代とあと某テーマパークのチケット代か」

一緒に楽しめる場所なら、某テーマパークだろう。そのチケットの値段と行きと帰りの新幹線代を計算する。

「……無理のない範囲でバイトすれば、大丈夫だな」

検索をし、旅費の計算を終えた坂城は、携帯を閉じて秋穂の肩に寄りかかった。
夢の中に居る秋穂は幸せそうで、彼は微笑む。 

「おやすみ、秋穂」

目をつぶって坂城も終点の市の駅まで、寝入ることにした。
――秋穂がお土産の宇都宮餃子を忘れていたことに気づいて騒ぐまで、あと2時間。
それまで夢の中で旅行の余韻に浸りつつ、幸せそうに二人は眠った。


END


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