坂城くんと秋穂ちゃん | ナノ




  08



「なぜそう思う?」


俺はとぼけず、真っ正面から翔と対峙する。


翔は怯まなかった俺に対し舌打ちし、答える。


「はっ、アンタにブルーメで"生徒会長してるのか"ってかまかけたら真姫驚いてただろ?」
「……良く分かったな」
「アンタのことちょっと調べたんだよ。真姫から名前だけは聞いてたからな」


そこでニタァと笑い、「アンタ、最低の野郎だなあ」と言う。


ちっ……俺の中学時代を知っているらしいな……。


「女とっかえひっかえして、真姫も捨てたんだろ?」
「お前には言われたくないな」
「真姫口説いてるって話か? 良いじゃん、別に。美春飽きてきたし、だったら、近くにいる良い女だろ」


せせら笑って言う目の前の男を殴りたくなった。アホじゃないか? 小田と美春の友情関係考えたら、普通、手は出そうと考えないだろう? それとその言い方は彼女達に失礼だ。余計なお世話だが美春は、なんでこんな人間の屑と付き合ってるんだ。


「だからさ、真姫寄越せよ。アンタだって迷惑してんだろ、巻き込まれて」


……迷惑?


迷惑……か……。


「迷惑かもしれないな、確かに」
「ほらな。だから……」


俺が自分の言い分を肯定したことによって、言うことを聞くと思ったのか?


違う意味だ、阿呆。


はっ、と嘲笑うようにして笑う。



「迷惑というのは、貴様に対してだ。小田を迷惑なんて思うわけないだろう? 大体脅し方からなってないな。青葉の温室育ちだからか? もっと人の足元を見ろ」
「な、」


翔は、俺のたったこれだけの反論怯む。


笑顔は母親の腹の中に忘れてきたが、人を高圧的に見るのは、得意なんだ。


「舐めて貰っては困る。伊達に泣く子ももっと泣く殺人的な睨みを不良から、貰っていない。不良達とも何度乱戦になったか。貴様のような奴、雑魚1か●ョッカーのイーイー言ってる奴にしか見えないな」
「例えがふりぃよ! ●ョッカーって何十年前だ!?」
「とある女子中学生に、仮面●イダーを語られ、初代●面●イダー舐めるな、と言われた」
「女子中学生が仮●ライダーについて語るってこぇよ!」


……この前(三皿目にて)ルノワールに居た秋穂に「初代●面●イダーってマスクイナゴですけど、役者さんすげぇ根性ですよねー」と秋穂は平成生まれなハズだが、初代●面●イダーについて訥々(とつとつ)と語られた……。


うん、アイツって……中身親父か。


初代●面●イダーって分かるか。俺の生まれる何十年前の話だ?


色々凄いよな、アイツ。


「ってなに言わせてんだよ!」


翔は、思わず突っ込んでしまい、首をぶんぶん振る。


「っんなことはどうでも良いんだよ。テメェなんて……」
「最低? ああ、そうだ。最低だ。だが、貴様よりはマシだ。小田は困っている。やっと人の輪に入れたんだ――……邪魔するな」



翔を睨み、低い声で凄む。


翔は、ぐ、と二の句が告げないようで黙る。


「……誓え。もう彼女に言い寄らないと」
「……んなこと誓えっかよ!!」


ワンパターンの逆ギレと拳を振り上げるポーズ。


「……っぁ」


避けようとしたところで、グラッと視界が歪む。


ガンッと強く頭を壁にぶつけた。


ヤバい……やられる……!


殴られると覚悟した時、彼女の静かな声が響いた。


「翔、止めて」
「……お、だ……」




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