坂城くんと秋穂ちゃん | ナノ




  06




他の4人と合流して、軽食を取り、近くのゲームセンターに来た。……中学以来だな……こういう所も。


ほとんどゲームセンター等娯楽施設には入ったことがないが、大体雰囲気は同じだ。


色々なクレーンゲームや子供向けのコインゲームにカードゲームの巨体、レースゲームに銃(ガン)ゲーム……。


色々なゲームの音楽が混ざり合い、不協和音を奏でているように感じた。


「プリクラ撮ろうぜ!」
「賛成〜」


晋太と里奈はテンションをあげ、美春は相変わらずにこにこ、翔は逆にニヤニヤ、小田はまだ俺に心配そうな視線を向けている。大丈夫だというのに。


翔はニヤニヤしたまま、真姫と美春に声をかける。


「真姫、美春は俺と取らねぇ?」
「え、」


小田は顔には出さなかったが、困惑していた。


「一回も撮ったことねえだろ、俺らで。なあ、美春?」
「そうだけど……坂城くんは?」


美春は俺を見る。プリクラを撮らないという選択肢は……


「じゃあ、そっち4人な! 俺はりーちゃんと撮ってくる!」
「ちょっ」
「後で6人で撮ろうなー!」


……ないらしい。


晋太が元気よく言い切り、里奈とプリクラの巨体に入っていった。


「じゃあ、4人で撮ろっか」
「そうだね」


小田と美春がそう言い、二人はプリクラの巨体を選び始めた。


「ちっ」
「……、」

翔が俺だけに聞こえる声で舌打ちするのが聞こえた。





小田は、出来上がった6人で撮ったプリクラに写っている俺を凝視している。


「……正紀、すんっごい仏頂面なんだけど」
「……笑顔は母親の腹の中においてきた」


……みんな楽しそうに笑っているのに俺だけ固まったように作った顔だ。何の表情もない。


「そんなわけあるかよ。ひでぇぜ、面」
「そんなわけある……」


けらけら笑う翔を睨み付ける。


写真は苦手だ。撮られると思うと顔がひきつるか無表情だ。小さい頃からそうで、うちには笑顔で写真に写っている俺は貴重だ。毎回正面写真のよう写ってしまうので、家族からは爆笑される。身内が一番ひどい。


美春がくすくす笑いながら「でも、」と言う。


「忘れられないプリクラになったよ?」
「美春は暢気すぎ。まあ、確かに!」
「だなあ〜」
「少し……ひどくないか……」
「落ち込まない落ち込まない!」


里奈にそう言われるが、毎回正面写真になるのはどうかと……。自然な笑顔無いし、作り笑いでも浮かべられるようになりたいものだ……。


「……っ、」


笑い合う4人の中、俺はくらっと立ちくらみがした。


……大丈夫、誰にも気づかれていない。


ほっとするが、少し休まなければ、ダメだ……。


「真姫、」
「なに?」
「ちょっとトイレに行ってくる」
「わかった。遊んでる」


小田に声をかけ、ふらつきそうになる足を叱咤し、トイレに向かう。




「……へぇ」


……後ろで翔が笑っていたとも知らず……






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