06
なぜ、こうなった……?
生徒指導室には、二つの声が響いていた。
「ほー。一流さんとはちっちゃい頃から一緒なんですか」
「まぁな。腐れ縁だ」
「良いですねー!! 腐れ縁……良い響きだわぁ〜」
「取り合えずお前の頭が腐りきってることも分かった」
「なっ! 当たり前のこと言わないでくださいよ〜」
「怒らないのか!? やっぱりお前、おかしい……」
今、俺は秋穂と自然に話している。
もうコイツを問い詰めてもダメだ……と悟ったからだ。
ならば、『菫』という奴を問い詰めれば良い話だ。
いや、別に、秋穂の馬鹿さ加減に呆れたわけでは無い。けしてそうでは無い。
それにしても……、と思う。
目の前のにこにこと笑う少女を見る。
(警戒心の少ない奴だ……。脅されてもそれが無かったように笑う。屈託無く、無邪気で打算なんて無い、心からの笑顔)
そんな奴は初めて見た。
俺は人を注意したり、悪いことを防止したりする立場にある。
いわゆる『面倒な奴』
今時期、高校生なんかは思春期で誰にでも反発したりする。注意されたり、悪いことを悪い、と指摘されるのが一番嫌だろう。
俺は『面倒な奴』だ。
それは自覚している。自分の行為が正しくても、どれだけ良いことをしても、本人の
為になると信じていても、感謝されることは少ない。
『面倒な奴』と言われ、人は自分を避けた。
だから、友達はいない。
人間関係は良好だ。けして悪くは無い。
そしてこれはいじめでは無い。自分の『正義』を押し通した結果だ。
それで良いと思う。
ただ、満たされない気持ちはどこかにあった。
誰にも理解されない寂しさ。朝義と自分は少し似ている。道が少し違っただけだ。独りなのは、同じだった。
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