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「まあ、前置きが色々あるんだけど、わたしが転校した理由、知ってる?」
「……離婚、と聞いた」
「そうそう離婚」
小田は、あっけらかんと「離婚」と口にする。重く話されても、困るが、こうも軽く話されると、調子が狂う。
だが、彼女の中では、整理が着いている問題なのかもしれない。
「で、父方に引き取られてたのよ。まあ、中学校みたいなことにはならないよう、立ち振舞ってる」
「そうか」
「うん。でもさ、困ったことになってさー」
彼女は、"困った"と言うわりに、いつもの口調も、表情も、変わらない。
「んー……イイコのフリし過ぎて……男友達に言い寄られてて……困ったわたしは"遠距離恋愛彼氏がいる"って嘘ついちゃったんだ」
「言い寄られててって……大丈夫なのか?」
「……ちょっとキツイ」
そこで初めて、彼女が、笑顔を崩す。はぁ……と深くため息をついて、「マジでさ、あり得ない」と沈んだ声で言う。
「……どういう奴だ?」
「今、一番仲が良い友達の彼氏」
「……、」
なんだそのドロドロ……!
……少女漫画にあるようなドロドロ。うわぁ、なんだそれ。
「うわぁ、だよね」
「悪い……うわぁ」
「あははは! うん、うわぁ!」
彼女は、うわぁ、うわぁ、と騒ぐ。
「落ち着け」
ケタケタ笑う彼女を諌める。笑いたい気持ちも分かるが、きちんと話してくれないと困る。
彼女はごめんごめん、と笑いを抑えて咳払いをひとつした。
「ゴホン……で、お願いの内容なんだけど……」
「……なんとなく掴めた気がする……」
……スゴく、ベタな展開……。
「さっすが。で、疑り深い男友達はわたしに"会わせてよ"と頼みました。ちゃんちゃん!」
小田は、パンパンッと手を叩いて、にっこりと笑う。
「坂城には、一日、わたしの彼氏になって貰うから。明後日、志良森で集団デート開催」
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