10
俺は、ぎこちなく小田に挨拶を返す。
「久しぶり、だな」
「うん。あんまり変わってないね、坂城」
そう言って、彼女は、笑った。
二年前と変わらない笑顔。
それにホッとした自分。
小田が、二年前とあまり変わっていないことに酷く安心した。
「お前は――……髪の長さと色……少し、痩せたか?」
「ん。まあ、色々ありまして」
二年前は、髪の色が綺麗な栗毛だったのに、今は黒だ。染めたのか、と聞く。
「まあね。イジメ対策ってやつ? まきちゃんは賢く生きることに決めたのです」
口調は軽かったが、イジメ、と聞いて心配になる。
「イジメられてるのか……?」
「全然! むしろ、楽しいよガッコ。みんな良くしてくれる。目立つの好きじゃないし、茶髪だと目立つでしょ」
楽しい、と聞いて安心する。だが、俺はあの地毛の栗毛が好きだったのだが。
それが、スルッと言葉に出た。
「お前の髪色好きだった」
「ふふ……本当相変わらずだねえ、坂城。歯の浮く言葉が似合う」
彼女は、そう言って、嬉しそうに笑い、「ありがとー」と軽く言う。
そして、パンッと手を叩いた。
「まあ、思い出話はあとで良いからさ、"お願い"聞いて貰っていい?」
「――……ああ」
神妙に頷く。彼女は、そんな俺を見て「そんな難しい話じゃないからさ、リラックスリラックスー」と茶化す。
「リラックスって何か違わないか?」
「良いの。力抜いて話そうよ」
「……ん」
俺は、彼女の言う通り、肩に力が入っていた。久しぶりに会う彼女と、"お願い"の内容が気になっていた。
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