05
ちっ……面倒な……。
だから餓鬼は嫌いなんだ……。
まあ……俺はそんなものに容赦はしないが。
「ちゃんと答えろ。中学生のお前が何でここに居る?」
「……だから、言えません」
秋穂は言いよどんだものの、キッパリと言った。
意外と芯はあるのかもしれない。
「言えばここから出してやる。―――……手荒な真似はしたくない」
うっ……と秋穂は俺の言葉に動揺し、目をさ迷わせる。
勿論、最後の言葉は嘘だ。手荒な真似などしない。ただ、俺は知りたいだけだ。『どうやって学校に忍びこんだか』ということを。
警備員はいるし、防犯カメラもあるのになぜこの少女と仲間、はいるか分からないが……その仲間は学校に忍びこむことが出来たのか。
理由を聞いたのは、一つ一つ聞いていった方が良いと思ったからだ。
でも手っ取り早くした方が良さそうだ。面倒なことは嫌いだからな。
ぎゅっと……秋穂は自分の服を握りしめた。やっと言う気になったか。
しかし、秋穂が口に出したのは否定の言葉だった。
「……言えま、せん……」
「なっ……」
「言えませんったら言えません」
秋穂は俺をキッと睨み付ける。
目には強い意思があった。
……まさか、俺に真っ向から挑んでくるとは……。
俺は自分の口許が緩むのを感じた。
面白い。
久しぶりに骨のある奴と会った。
が。
秋穂の次の言葉で俺は机にへたることになる。
「坂城さんは……、
菫の恐ろしさを知らないからっ!! アイツ恐いんですよ!? 口の悪さは大魔王より恐ろしい……! 裏切ったら血祭り……否ズバズバと『役立たず。本当に何も出来ないんだね。役立たず。大事だから二回言ったよ』って笑顔で言うに違いないんですゥゥウウ!! おっかないよ、おっかないよォォオオ!!」
ズサァァ!!
俺は机の上に頭を打ち付けた。
「え、坂城さん? 大丈夫ですか……?」
机に頭をぶつけた俺に秋穂が気遣わしげな声をかける。
ガバッと顔を上げ、勢いのまま突っ込む。
「ええい!! 結局はソイツが恐ろしいからか! 骨のある奴……とか見直した俺が馬鹿
みたいでは無いか!! KY……! シリアスな空気を返せっ! お前は結局何なんだ……」
最後のは独り言のようなものだ。秋穂のような奴は初めてだ。こうも自分のペースを
崩される奴は。意味が分からないし一挙一動予想が出来ない。
そして秋穂は、俺の問いに当然のように答えた。
歌うように、またまた変な答えを口に出す。
「澤北秋穂。ピチピチな14歳。眼鏡な坂城さんの前に居る、『鋼の女』こと『恥を知らない奴』こと『KY』です」
えへっと笑い、「坂城さんって何が好きですか?」と場違いな質問をした。
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