坂城くんと秋穂ちゃん | ナノ




  06



どこいくのー? と聞く姉に「散歩」と答えて、家を出た。


もうすぐ12月。


風は冷たく、肌寒い。はー……と吐く息も白くなり、消える。


小田真姫のことを思い出す。


"元カノ"


彼女は、中学時代に付き合っていた女子の最後の一人であり、唯一、長く続いた女子だった。


告白してきたのは、あっちからだった。


"手当たり次第に付き合わないで、わたしと付き合わない? 一応坂城に釣り合うと思うよ"


彼女のことは良く知らなかったが、サバサバした性格で、物事をハッキリ言い、女子に嫌われていたのは、知っていた。


容姿も……黒がかかった栗毛のロングヘアー、黒いパッチリとした目、女子としては高い身長……綺麗な顔とプロポーションを持っていた。


それも、やっかみの対象になっていたのだろう。


だが、俺はその性格には好感が持てた。そのとき、俺は、来るものは拒まず、去るものは追わず、だったし、二つ返事で付き合うことにした。


思えば、少し、自分と重ねていたのかもしれない。



いつも一人でいる自分と、どこか人と一線引いている彼女。



集団の輪に入らない二人。



彼女は、今まで付き合っていた中で、一番居心地が良かった。


他の女子とは違って、うるさくない、余計なことは言わない、とにかく話が合った。


彼女は、彼女のペースで話し、俺は俺のペースで話した。


無言になっても、気まずいとは思わなかった。



それさえ、心地よかった。


順調な付き合いだった。清い、普通の、付き合ってるとは言えないような、昼休み話して、放課後一緒に帰って、たまに土日遊んで、勉強を教え合って……楽しい、と感じられた毎日だった。



しかし、問題が起こった。



前付き合っていた女子が、"私と坂城はまだ別れてない"等と言ってきたのだ。


……来るものは拒まず、去るものは追わず、の精神がダメだった。


その女子は、派手なグループの中心人物だった。


中学生なのに、化粧をしている女子。


はっきり言って、好きなタイプではなかったが、告白されたから適当に付き合って、"化粧はしてこないほうが良い"と言ったら、よく分からなく喚かれて二週間も経たずにフラれた。


たぶん、その女子は、彼女に嫉妬してたんじゃないかと、思う。


陰湿な虐めも行っていたし、彼女もその標的だった。


"あんな女と別れてよ。ていうか、浮気じゃん"


耳に残っている言葉。校舎裏に呼び出されて、そう言われた。無性に怒りが湧いたのを思い出す。


"――……化粧で着飾っている君より、彼女の方が何倍も綺麗だ"


最大の皮肉。その女子は、顔を真っ赤にして、俺の頬をひっぱたき、どこかに消えた。


熱い頬。




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