02
〈生徒会室〉
「……もう死にたい……」
ボソッと不穏なことを呟く。
11月ももう終わる頃。
生徒会長になって早三週間が経とうとしていた。
生徒会長の仕事は少しずつ覚えて行ってるし、それなりに充実していたが……。
篠塚先輩がウザイ。どうしようもなく、ウザイ。
毎日毎日何なのか。ピンクのオーラ全開で迫ってくる。抱きつき、お触り、キスを求められるのも日常茶飯事……。
それで、もう、精神的におかしくなりそうだ。
ストレスがピークに来ている……。
体は疲れてるのに頭は覚めていて夜は眠れないし、頭痛、胃痛が酷い。
明日の予習も危うく、勉強に支障を来してしまっている。……ああもう……死んだら、楽に……。
「坂城さん、病まないでくださいよ」
「……ひらの」
大丈夫ですか? と親切にも声をかけてきたのは、生徒会書記になった平野奏だった。
最初、同じく一年で生徒会に入ると聞いて驚いたものだが、理由を聞いて納得……というかいやはや……抜け目ない。
『人に慣れるためと、進学にも有利ですし。……あとはまあ、色々便利だから、です。生徒会っていうのは』
その"色々"の中身が気になるんだが……どうせ黒いことでも考えてるのだろう。
「僕の名前も漢字変換出来なくなったんですか?」
からかいを含めた声だったが、俺は机にふせったまま、暗い声で言う。
「もう無理だ本当死にたいそれか誰か篠塚先輩を殺してきてくれ……」
「……これは、結構キテますね……」
平野は少し考え込み……「今日は、これに判子押したら帰ってください」と書類を机に置いた。
「生徒会室で病みオーラ出されても困るんですよ。今日の分の仕事はみんなでやっておきますから、早く帰ってください」
平野の気遣いは嬉しいが、俺は、しかし、と渋る。
平野は、はぁ……と芝居がかかったため息をつき、グサッと来るようなことを言う。
「倒れられたら、その分、困るんですよ」
「……そうだな……」
「ちゃんと休んでください」
ああ、と今度は渋らず返事をした。困る、と言われて、ため息をつく。平野の言う通りだが、精神的にキテるとはいえ、役員に心配をかけるとは頼りない生徒会長だ……とまた気分が落ち込む。
頭を振って、負のスパイラルを追い払う。
今は、平野から渡された書類に目を通し、生徒会長の判子を押さなければいけない。
そう思い、死にそうな頭をフル回転させた。
prev|
next
しおりを挟む