03
教室の中には、きょとんとした秋穂とどうするか迷っている坂城。
坂城は秋穂を見る。
秋穂も坂城を見返す。
「「………」」
じー…
じーじー…
じーじーじー…
「ええい!なぜ逸らさない!!」
痺れを切らしたのは、坂城の方だった。
秋穂は「へ?」と間の抜けた声を出す。
「なぜジッと見てくるのだ!?」
坂城は問う。
なにげなく秋穂を見ていただけなのに、秋穂はずーっと見てくるから逸らせなくなってしまった。
秋穂は堂々と答える。
「いや…見られたら逸らされるまで頑張るんです!」
「……なぜ…?」
「え?勝った!って思いません?」
「思わない!というか…相手は迷惑じゃないか…?」
「いえ。ほぼ赤ちゃんとの勝負なので。年上とやったのは初めてですよー。あ。勝った!!」
秋穂は、嬉しそうにいう。
ころころよく笑う少女である。
坂城の中でだんだん秋穂の性格が確定してきた。
(コイツ…馬鹿…だな…)
秋穂は会って数分も満たない相手に『馬鹿』と思われるほど『馬鹿』なのか…。
太字で強調されるくらい『馬鹿』であることは確かだ。
はぁ…と坂城はため息をつき、入って良いのか…?と躊躇っているクラスメイトに言う。
「俺はこの子を生徒指導室に案内するから、みんなはちゃんと授業を受けてくれ。よろしく頼む。」
「あ、あぁ…何かよく分かんねえけど…頑張れよ…?」
「ありがとう。」
坂城はクラスメイトによく分からない応援をされ、お礼を言う。
そして秋穂に向き合った。
すこし、睨み付けて。
坂城は怒っていた。
朝、しかも朝義は金髪に染めてくるわ、反抗する…ただでさえ忙しいのに、どうして
中学生の少女を押しつけられなくてはならない…?
俺だって面倒事は嫌なのに…と彼らしくもなく、イライラした気持ちになっていた。
だから、少し秋穂に当たってしまう。
「今からお前を生徒指導室に案内する。ちゃんとついて来い。」
睨み、威圧的に言うが、秋穂はなんのその。
「はーい。あ、あの…眼鏡さんの名前は…?」
秋穂のKY過ぎる発言に、イラッ…と坂城の眉間にシワが寄る。
「………坂城…坂城正紀だ…」
坂城は静かな声で告げる。
それを聞くと秋穂は、ぱぁと顔を明るくした。
「坂城さんですね!うちのことは気軽に『秋穂』って呼んでください☆」
にこにこと明るく言う秋穂だが、坂城のモチベーションは下がるばかり。
今更何を言っても無駄だろうと…坂城は秋穂を生徒指導室に案内することにした。
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