坂城くんと秋穂ちゃん | ナノ




  04



藤野委員長が、鮎川生徒会長と礼宮先輩の代わりに話してくれた内容をまとめると、こうだ。


先々月の構内レクエーション(という名のペイント銃サバゲー)で、甚大な被害と怪我人を出したせいで、九月末に行われるはずの選挙が出来なくなり、11月までずれ込んだ。(それは、俺も知っていた。)


そのことで、先生方も風紀と生徒会について考えた。


『鳳有に二つも生徒の自主的委員会は、必要か』


風紀と生徒会のこれまでの活動内容を検討。それに少子化もあり……結果、活動内容を生徒会と風紀を合わせて、風紀委員会は廃止。


……あれだろうな……どっちもトップが有能なのに、毎回毎回追いかけっこやらなんやらしてるからだろうなぁ……。あと、風紀は篠塚先輩がいるからなぁ……。それも、問議となっただろう。


少子化は取って付けた言い訳だろう。



「……私の代で伝統ある鳳有委員会のひとつを潰してしまうなんて、ふがないです……」


礼宮先輩は、そう言い、肩を落として、落ち込む。


俺は、それを首を振って、否定した。


「あれは、止めなかった先生方も悪いんです。怪我人も想定していなかった」
「いえ、良いんです……。ありがとう、坂城。これが、私たちに二人に課せられた処分ですから」


礼宮先輩は、力なく首を振り、鮎川生徒会長を「静」と端的に呼んだ。


鮎川生徒会長は、頷き、真っ直ぐに俺をみた。


いつものへらへらした表情ではなく、真剣な表情。



思わず、背筋が伸びる。



「――……僕たちは、篠塚を生徒会長にはしたくない。だから、坂城くんに生徒会長になって欲しいんだ」
「――……!?」



話された内容を飲み込むのに、数秒かかった。



動揺をどうにか抑えて、「俺が、生徒会長ですか……?」と聞き返す。


「うん。お願いできないかな?」
「俺は、一年ですよ? それに、生徒会の仕事は知らないし……」
「風紀とほぼ一緒です。引き継ぎに時間がかかりますから、1ヶ月ほど仕事を教える時間があります」


そう言われても……


「二年生を差し置いて、一年が生徒会長に立候補するなんて……そもそも、鮎川生徒会長は、人望があったかもしれないですが、俺は、人望なんて一切ないですよ。むしろ、恨みを買っている方です」


「方」ではなく、確実に買っている。校則を破れば、不良や先輩など関係なく注意してるし、厄介者だという自覚は持っている。


生徒会選挙は、一年から三年までの立候補につき、一人一票の投票。顔を知らない立候補ならともかく……学年の投票は、少数だろう。


ある意味、人気投票でもあるのだから。


「――……」


ならば、俺がなれるはずもない。そもそも、一年で生徒会長など早すぎる。


断ろうと口を開いた時……礼宮先輩に遮られた。


「恨みばかりでもありませんよ」
「え?」


意外な言葉に目を剥く(むく)。


「あなたのしてきたことに感謝している人はちゃんといます。だから、大丈夫ですよ」
「そうで、しょうか……?」
「……というか、ですね……」



ガシィ! とすごい力で肩を掴まれた。



「れ、礼宮せんぱ、」
「逃しませんよ……坂城……!」
「い゛っ」


ギギギ……と骨が悲鳴をあげる。痛い痛い痛い! 礼宮先輩の細い腕のどこからこんな力が出ているのか。本当に痛い!


「華夜を生徒会長にするわけにはいかないのです……生徒会長になりますね? YESかはいで答えなさい……」
「NOは無しですか!? い゛っ!?」
「答えるまで手は離しません」
「ちょ、脅しじゃないですか!!」


痛い本当に痛い。誰か助け……


「アリアちゃん剣道二段だもんねぇ……」
「いいぞー離すなー」


……ここは敵地か!!


鮎川生徒会長と藤野委員長に、助けの意味を込めて、見たが、そらされた。ひどい。


「分かっ……分かりました!! やりますやります喜んでします!」


もう返事をするしかないだろう。肩が悲鳴をあげている。礼宮先輩も怖い。


勢いでそう言ったら、礼宮先輩はにっこりと笑い、俺の肩から手を離した。


「それで良いのです。さすが、私の後輩」
「どれだけ篠塚先輩に生徒会長やらせたくないんですか……」


礼宮先輩の必死な様子に思わず、そう漏らす。気持ちは分からなくもないが……一応、あの人学年首席なんですが……。


「票、入らなくても知りませんよ……」


恨みがましくそう言うが、三委員長は何のその。


「大丈夫です」
「僕らが何とかするからさ〜」
「お前は大船に乗ったつもりでいろ」


はあ、と肯定ともため息とも取れる息を吐き、よろしくお願いいたします……と言った。





prevnext
しおりを挟む




back


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -