坂城くんと秋穂ちゃん | ナノ




  18



「――……それで、なんで不良に追いかけられて捕まってお茶してたんだ」


あの後、ブルーメの店長に「すいませんでした」ときちんと謝り、店を出た。


店長は優しくて「大丈夫大丈夫。たまにいるからねぇ、ああいうの」と言ってくれた。


いま、俺と秋穂は、駅前のベンチで座っている。


俺は、どうにも府に落ちない点があったので、秋穂に聞いていた。


秋穂は、気まずそうな顔をしながら、口を開いた。


「えっとですね……制服で来るつもりはなかったんです。けど、何を着ていくか迷いに迷ってたらもう電車までの時間がなくて……ええいっ制服で良いやっ! で鳩羽まで来て、駅前で坂城さん待ってたら、あのハイカラな連中が声をかけてきて思わず逃げてしまい……三時間鬼ごっこ」
「本当、何やってんだお前」
「……そう、言われるとへこみます……」


しょぼーん……と項垂れる秋穂。


大体分かった。


つまり、まとめると、制服で来ていた秋穂は、不良達に金持ちと間違われ、カツアゲされそうになり、思わず逃げた。なぜか、不良は追ってくるし、秋穂も逃げる。そんなこんなで三時間鬼ごっこしていたら、体力が切れて捕まり、ケーキでも奢れや……ということか?


秋穂にそう言うと「正解です……ついでに言いますと、携帯の電池は切れました……連絡出来なくてすみませんでした……それに昨日の夜確認したら、ブルーメのタダ券も昨日まででしたし、うち死ねって感じです……」と言いながら悲壮感を漂わせ、もっと肩を落とした。


お前はどこの不幸体質少女だよ……。


「さっきまでの威勢はどうした」


あの場で堂々と警察を呼ぼうとした度胸があっただろう、と言う。


だが、秋穂はますます落ち込みを激しくした。


「……良く考えたら、坂城さんに迷惑ばっかって思って……今日もすっぽかしたし、お礼も出来なかった……」
「まあ、そうだな……」


確かにその通りだ。


「……やっぱり……」


しまいには、ベンチの上で膝を抱える始末。


あー……これどうすれば良いんだ。


慰めるなんて出来ないぞ、俺……。


「あー……秋穂、なんだ……その、」
「良いですよ別に……たぶん、5分後には回復するんでもう坂城さん帰って良いですから……」
「……、」


なんだこの面倒臭いの。


慰めを拒否されるなんて……しかも帰れ、だと?


人をさんざん振り回しておいて……?



ブチッと。



さすがの俺も何かがキレた。




「だったら、一生そこで落ち込んでろ、馬鹿。俺はお前が不良に追いかけ回されると聞いたから、鳩羽中を走り回ったというのに! お前は不良とお茶してるし、俺は絡まれるわさんざんだ!!」


本当、今日はさんざんだ。


なぜ俺がこんな目に合わなくてはいけない?


秋穂を二時間も待ち、鳩羽を走り回り、不良に胸ぐらを掴まれて、挙げ句の果てには帰れ、と言われる。


声を荒げ、大人げないとは思ったが、止められなかった。


「……うちだって……」


秋穂は膝を抱えながら、俺に反論しようとしたが、口をつぐんだ。



そして、




「……ごめんなさい……」





「!」









――……弱々しいほどの声でそう、謝った。



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