16
「どうやら本当に保護者みてぇだな」
「ああ。不本意だけどな」
「……しゃべりたいおー」
「「……」」
不良がなんだか同情的な目で見てきた。
見るな、そんな目で俺を見るぁぁああ!!
秋穂は、無視だ無視。
不良は不良でも言葉が通じるようで、一応説得してみる。
「取り合えず、コイツが馬鹿で金も持っていないことも分かっただろう。帰って良いか?」
「おっと……保護者のお前は持ってんだろ? 出せよ、金」
卑下た笑いを浮かべながら、金をせびってくる不良。
「悪いが俺は持ってな」
「嘘つくんじゃねぇ!」
俺がとぼけると不良は俺の胸ぐらを掴み、凄んでくる。
だからどうして不良は胸ぐらを掴みたがる? 服が伸びるだろう。あと凄んでるのか知らないが、「オラオラ」言われても怖くない。
あと後ろで「……ぶっ……顔ちかっ……ふぐっ……」なんて悶えてる秋穂の声なんて聞こえない。
はぁ……と本日何回目かの深いため息をつき、「警察呼ぶぞー」とやる気のない声で言う。
もう面倒になってきた……。本当に。
秋穂を待って疲れたし、秋穂を探して疲れたし、秋穂に突っ込んで疲れたし、……疲れの元凶は後ろにいるコイツか。
「はっ! 呼んでみろよ。俺らは何もわる」
「あ、もしもし警察ですかー? 犬のお巡りさん? はい、はいー。目の前で不良がオラオラ言ってくるんですー怖いですきゃー」
「「!!!?」」
え?
恐る恐る後ろを振り向く。
「きゃー助けてー乱暴されるー」
――――……秋穂が携帯を片手に棒読みで警察に助けを求めていた。
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