坂城くんと秋穂ちゃん | ナノ




  14




カラン、と店のチャイムが鳴る。


注文を取ろうとする店員を制し、迷わず秋穂がいる席まで行った。


徐々に見えてくる赤、金、紫……等数名の不良の頭。



「あははは!!」
「マジイイッスね!」
「だろっ?」



思わず顔をしかめてしまうほど、 そこの席は騒がしかった。周りの客も迷惑しているようで、遠巻きにヒソヒソと話している。


そこで一人引きつった笑顔を浮かべながら、頷いている秋穂がいた。


「なあ、青葉の嬢ちゃんも思うだろ?」
「そ、そうですね〜……」


なぜか秋穂は制服で、金髪の一人に腕を回され一瞬ビクッと体を震わせたが、へら、っと笑いやりすごしていた。


「秋穂、」
「!」


俺が名前を呼ぶと、秋穂はパッと振り向き、明らかに安堵した表情を浮かべた。


逆に不良達は俺を見て怪訝な顔をする。


「帰るぞ」


秋穂の肩に回されていた金髪の男の腕を取ってやり、腕を引く。


「は、はいっ」


秋穂は立ち上がろうとしたが、上手く立ち上がれないようで「あれ、あれっ」とソファを滑った。


すると、隣にいた金髪が立ち上がり俺を睨み付けてきた。周りの仲間は面白そうに見ている。


「おい、兄ちゃん。この子の彼氏か何かか?」
「いや、そうだな……保護者か?」


断じてそれはないという意味でいう。


不良は「は?」と言って俺をジロジロと見た。


なんというか……一番保護者という説明がしっくりくるような気がする……。


兄というのもなんだかおかしい。


すると秋穂が「いえっ、メル友ですっ」と口を挟んできて不良がもっと怪訝な顔をする。



「……保護者だ」



黙れ、という意味で強めにそう発言をする。ついでに秋穂を腕をつかんで無理矢理立たせた。


「うわぁ!」
「……手荒な真似は許せ。後ろにいろよ」


秋穂に聞こえるような声で早口でそう言った。


バランスが取れなかったようで俺にしがみついたが、それはしょうがない。


さっと指示通り俺の後ろに隠れ、不良を窺う。


「おいおい……保護者だかなんだか知らねーが……俺らの金蔓(かねずる)取ってじゃねーぞ、ゴラァ!!」


金髪の不良は、いきなりキレ、机を蹴る。


ああ、ケーキや紅茶が無くて良かった。


この不良キレやすいな……。カルシウム200CC毎日摂ってないな。まあ、不良なんて図体ばかりでかくて中身は空っぽなんて場合が多い。


それと、秋穂を狙う理由も分かった。


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