坂城くんと秋穂ちゃん | ナノ




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「……お前に会ったことで最悪だ」


立ったまま不機嫌そうに答える。


コイツに関わるとろくなことがない。


「あらー? 私が何かしたかしら」
「自分の胸に手をあてて見ろ」
「胸ですって。えっちね、坂城くん」
「黙れ。何か用か」



「ええ。ちょっと楽しくなりそうなことを報告に」



満面の笑みでそう言う雪白に、俺は失敗した、と思った。


――……聞かなきゃ良かった。奴にとって楽しくなりそうなことは、俺にとって最悪の幕開けだ。


**


「今日来た菫ちゃん、秋穂ちゃん、飛羽ちゃん、の中学生三人組は私の友達なの」
「そうか」


朝義も知り合いだったようだし、雪白が友達でもおかしくない。雪白は悪どい笑みを浮かべ、それで、と続けた。


「今日来た理由、知りたくない?」
「……いや、良い。なんかどうでも良くなった」


一瞬、「知りたい」と思ったが、もう良いと思った。秋穂を見て馬鹿馬鹿しく思ったからだ。知らなくてもなにも困らない。


「へぇ……ま、青葉の中等部副会長から頼まれたお使いだったのだけど、こっちに連絡し忘れたらしいわよ。だから、不法侵入扱いになったわけ」
「そう、か……秋穂には悪いことをしたな……」


まさか、連絡が行っていなかったとは思わなかっただろう。それを問い詰めて……やり過ぎた、と反省する。


「さーて、ここからが本題よ」
「……別に、言わなくても良いぞ?」
「いいえ。逃がさないわよ」


にこにこと楽しげに笑って言う雪白。激しく遠慮したい。


「菫ちゃんが折角教えてくれたんだもの。知らなきゃ損よ?」
「……話の内容による……」


雪白の口振りからすると、俺が関係してるらしい。


……関係してなきゃ教えてこないか……。





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