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それに驚き、慌てて「頭なんて下げないでくれ」と言う。
「悪いのは蛙を逃がした先生だ」
「俺かよ……まあ、そうだな……」
「でも、騒いだのは秋穂のせ……なんで寝てるの」
気持ち良さそうに寝ている秋穂を見て、菫の声音が、ぴしゃっと絶対零度に下がった。
その豹変はあの平野がキレた時を思い起こされた。
「……謝りたいからって秋穂が言ったのになんで本人は寝てるの。葵先輩に朝早くから起こされて私だって眠いんだよ。
早くお使い終わらせて青葉に帰ろうとしたら、秋穂いないし。
なにやってるの。ばかなのあほなの死ぬの。
カエル見て騒いで誰だか分からない人にぶつかって救急車呼んで逃げようって言ったのに『坂城さん殺しちゃったぁぁぁ……』とか騒ぐから野次馬いっぱい来て逃げられなくなったし。
誰だし坂城って。ねえあき」
「す、菫ちゃん、今、秋穂起こすからっ!」
「……よろしく、飛羽」
目がもうそっくりだ。ひきつった笑いを浮かべる俺と朝義。あの時のことを思い起こしてるに違いない。
飛羽が菫をいさめ、急いで秋穂を起こそうとする。
「ほら、起きて秋穂っ!」
「……ひゆう……食べちゃだめ、ひなたはあおい、せんぱいの……」
「どんな夢見てんじゃ―――!!」
優しく揺すっていたが、叫んだ勢いで激しく揺すり出す。
「……ふ、腐腐……ヤっちゃえ……」
「ばか秋穂―――!! 起きろっつーの!」
バシンッと背中を叩く飛羽。
いや、もう起きないならそのままでも……。
そう思った時、秋穂がゆっくりと起きた。目がとろん、としていてまだ寝ぼけているようだ。
「んぅ……おはよ……美緒……?」
「飛羽だっつーの! どこにあの長い髪がある!?」
「……髪、切った……?」
「んなわけあるかぁ! 覚醒しろ、ばか!!」
「ばかばか言わないで……洗面所……」
「ここは寮じゃない!」
いつになっても覚醒しない秋穂に困った顔をする飛羽を見て、可哀想になってきた。
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