12
少女を見つけたのは雪白に連れ込まれた部屋を出てすぐだった。二階できょろきょろと周りを見渡し何かを探しているようだった。ここからは少し遠かったが「おい、秋穂」と声をかけた。
「あ……」
秋穂は俺を見て目を大きく見開き、息を止めるほど驚いていた。
――予想していたのは笑顔で俺に近寄ってくる少女。予想とはかけ離れた反応に胸が跳ねた。
「すいませんごめんなさい人違いです!!」
少女は勢いよくお辞儀をし俺から、逃げた。
「な、っ秋穂!? そんな驚き方するのはお前しかいないだろうが!」
俺は少女に向かって怒鳴り追いかける。少女はすぐ下に向かう階段を見つけ、危なっかしく二段、三段と階段を飛ばし駈けていく。
――ふんわりとした素材のショートパンツが揺れる。
「どいてください!踏むから!!どけっつーの!」
「ば……っ!」
語気荒く怒鳴りラスト五段を勢い良く跳ねて降りた。
「通してください!邪魔ぁぁああああ!」
ギャラリーからはどっと悲鳴や冷やかす声が聞こえ秋穂は人混みに消えていく。俺は肝が冷えてその場から動けずにいたが、心の底から沸々と怒りがわいてきた。
なぜか少女は素知らぬフリをして俺から逃げる。しかも、五段飛ばし跳ね降りという失敗すれば足を折るような危険な真似をしてまで、必死に逃げて見せた。
分けがわからない。
そしてそれが余計に俺の心を荒立たせる。
「クソ!馬鹿秋穂!!」
足に力を入れ、人混みに少女を追いかけた。
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