坂城くんと秋穂ちゃん | ナノ




  08




「惚けんじゃねぇよ。ロリコンって意味だバーカ」
「意味の分からんことを言うな」


 朝義にバレてる……秋穂を好きなことが。なぜ? そんなに分かりやすいか? 内心焦るが、そんなこと臆面に出せるわけがない。


「へぇ……好きなんですか、秋穂ちゃんのこと」
「誰がそんなこと……」
「秋穂ちゃんみたいなタイプは落とすのが難しそうですよね」


 は……?


思わず真顔になり、平野を見る。


「鈍感っていうか、AKYって言うんですか? 坂城さんになつくだけなついて告白したら"冗談ですよね"って笑って済ますような感じがします」
「そんなこと……」


 ……いや、あるのか? アイツへの気持ちを自覚したのはここ二月の間だ。今まで散々バカバカ言ってきて、女扱いなんてしてこなかった……というか、今まで付き合ってきた女子とは違い過ぎて、バカだし扱い方も粗雑だったかもしれん……。ポジティブな割りにアイツは自分を過小評価しているようだし……告白しても笑って済まされるなんて今度こそ立ち直れない。


「……本当に好きなんですね、秋穂ちゃんのこと」
「ガチかよ、ロリコン」


 黙り切った俺に向け、確信したように言われる。


「悪いのか? 自分でも気持ち悪いって思うんだから放っとけ」


 逆ギレしながら開き直った俺に、平野は「まあまあ……そんなに怒らないでくださいよ。意外だと思いましたけど、気持ち悪いだなんて思いません」と笑顔を向ける。


「俺は気持ち悪いって思ってるけどな!」
「はい? 槻川さんにデレデレな上に何も出来ないへたれてる一流さんよりずっと良いと思いますよ」
「デレデレってなんだゴラァ!? ヤンデレのお前よりマシだっつーの!」
「僕たちはお互いがお互いを想い合ってるんです。ヤンデレだろうがツンドラだろうが受け入れてくれる相手が入れば何も問題ありません。鴻季さんの嫉妬、かわいいですよ」


 キッパリと歪んだ愛を肯定する黒い笑みを浮かべた平野。思わず引く俺と朝義は間違ってない……平野と神人の愛は海よりも深く、山よりも高い。


傍目から見て恐ろしいほど相手を好きになれるのは……どうしてなんだ? 秋穂にそこまで熱を上げれないと思う俺の方が、おかしいのか?


 それとも……失敗が影を潜めているから、一歩踏み出すのか怖いだけなのか……。


「あ、そういえば……雪白さんにお返し、どうします?」
「げっ」「う゛」


 忘れてた、というか考えないようにしていたが正しい。朝義も同じようで顔を真っ青にして震えだした。


「あんなトラウマになるバレンタインを体験したのは初めてだ……っ」
「ええ……恐ろしいバレンタインでした」
「何があったか知らんが、同情する」


 あのウィスキーボンボンの威力は知らないが、平野と朝義の表情から相当なトラウマを刻まれたことを窺い知れる。


……つくづく、あの時に帰ってよかったと思う。


「…いっそ、雪白にさっきのチョコフォンデュの話をして雪白の家でホワイトディを祝えば良いんじゃないか? アイツは騒がしいことが好きだろう。ついでに槻川や神人にもお返し出来て一石二鳥だ」


 俺は自分を勘定には入れず(きちんと雪白にはお返しはする)、何気なくそう言うと平野は手を打ち「坂城さん、ナイスアイディアです!」と俺の案を採用した。


「ついでに秋穂ちゃんや菫も呼びましょう。騒ぐなら大勢がいいです」
「誰も参加するとは……」
「言い出しっぺが何を言うんですか。雪白さんには言っておきますから、決まったら詳細はメールします」
「……」


 張り切った平野に何も言えない。朝義も乗り気のようで「お返しで雪白にグチグチ文句言われるよりよっぽど良いぜ…」と呟く。


「まぁ……良いんじゃないか。羽目を外さない程度に騒がしく、と雪白に言っておいてくれ」
「わかりました」
「来たくないなら来なくても良いんだからな!」


 朝義に憎まれ口を叩かれ、肩を竦める。確かに朝義の言う通りだが……秋穂の都合がつくなら行こう、と思う俺はアホだ。




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