11
目を開けた時、真っ白い天井が見えた。
「――……う゛ぅ……」
ここは……?
疑問がわきあがり、取り合えず体を起こして確かめようと体を起こそうとした。
「……っ!」
その瞬間、全身に鋭い痛みが走る。思わず、悶絶し、起きるのを諦め少しかたい布団に身を沈めた。
な、なんだ……この痛み……。
全身筋肉痛でも(中学時代、毎回、剣道部合宿にて、風呂に入ったあとなぜか永遠と篠塚先輩に追いかけられ、全身筋肉痛になったことがある。鬼気として「喰わせろ……」と言って迫られた恐怖を俺は忘れない)こんな痛みにはならなかった。
その痛みで一気に頭が覚醒し、右手だけが妙に暖かいことに気づいた。
「秋穂……?」
首だけ動かして見えたのは、ぎゅっと両手で俺の右手を握ったまま、寝ていた秋穂だった。
「おう、起きたか坂城」
「小田切、先生……」
白いカーテンが開けられる。ああ、ここは学校の保健室か、と小田切が立っている奥で「書類、書類はっとー」となにかを探している校医の三浦先生を見て思った。
「体、起こせるか」
「……少し、辛いです」
そう言いながらも、なんとか体を起こした。全身走った激痛に顔を歪ませる。小田切から「おい、無理すんな」と声をかけられるが、寝たまま話すなんて失礼だ。それに、耐えられないほどじゃない。……痛いが。
小田切は俺のその行動に眉をひそめた。だが、諦めたようにため息をつき、俺の状態を話してくれた。
「全身打撲だそうだ。それか酷い打ち身。骨が折れてなくて幸いだな。病院に行くほどじゃねえが頭打ったらしいからあとで精密検査に行けよ」
「そうですか……」
この酷い痛みは打撲か。よくそれだけで済んだものだ。骨の一本は覚悟したのだが……不幸中の幸い、か。
「それであの、」
ちらっと俺の右手を握ったまま寝入っている秋穂を見た。
――……なぜ、ここに……。
「その子はお前に謝りたいってずっとここにいたぞ。なつかれたな」
小田切はニヤッと笑いながら言った。
うるさい奴だ……。なつかれたってなんだ、なつかれたって。
「ずぅっと身動ぎもせず、黙ってお前の隣にいたぞ。可愛いじゃねえか」
「何を期待しているかは知りませんが、コイツと俺は今日知り合ったばかりです。知り合い以上かそれ以下です」
俺の機械的な返答に小田切は「ちぇっ……坂城、お前はやっぱり可愛くねえ……」と舌打ちして言った。
はいはい……可愛げなんてあってたまるか。
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