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「なにがそんなに面白いの!? ねえ、坂城さん! 坂城さんが面白いんなら良いけどさ! こっちは意味分からないんですけど!?」
「あー……どうでも良くなってきた」
「え、スルー!? スルー!? うちを無視しないで!!」
騒いでいる秋穂。
坂城さんねえっ! ねえてっば!? と寝ながら俺の右腕を揺する。
久しぶりに大笑いをした。
こんなに笑ったのは初めてかもしれない。
口にしたようにすべてがどうでも良く感じられた。
俺が"独り"でいたいとか、俺の気持ち、感情、他人、繋がり、世界、少女を頼ったこと、そのことのとまどい、少女のあの表情。
すべて。
どうでも良くて、気づいたこと。
自分は少女と居るのがどうしようもなく楽しくて、少女と一緒に居れることが嬉しい。
俺には無いものを沢山持ってる。
キラキラしたものをたくさん。
ああ、俺は少女が好きなんだ。
本当にばかでどうしようもなくあほな少女が好きなんだ。
俺の調子を狂わす少女が、しょうもなく。
今、少女に惚れた。
ストン、と収まった気持ち。
惚れた理由なんて、知るか。
そんなもん後付けで、良い。
分からなくて、良いじゃないか。
この気持ちは初めてのモノで――……俺には気持ちが芽生え始めたことが一大事なのだから。
「うあああん! 無視しないでよおおお!!」
「うるさい。阿呆」
騒いでいる秋穂にでこぴんを食らわす。
「いっ! 暴力反対!!」
「お前がうるさいからだ」
「坂城さんが無視するから!」
「お前が変なことするのが悪い!」
「してないもん! 朝義さんが突っ込んでくるのが悪かったんだって!」
「避けないお前が悪い」
「一人避けた坂城さんが何を言う!?」
「避けた者勝ちだ!」
「なんかカッコいい……! ってうちにも何か一言くれよ!」
「イヤ……かもな?」
「拒否なの疑問なの!?」
「断固拒否する」
「坂城さんになんかすごく拒絶された!! 世界の終わりな気がする!」
俺は秋穂がぎゃーわー言っているのを聞きながら、笑っていた。
そして、いつの間にか口にしていた言葉。
「楽しい」
「へ、」
「今は楽しい」
「!
そうですか!! うちも楽しいけど!」
秋穂が嬉しそうに笑い、雪の上から跳ね上がり俺に手を差し伸べる。
「雪だるま作り、再開しましょう!」
「ああ。そうしよう」
俺はその手をしっかり握った。
スノーボール
(淡く芽生え始めたモノ)
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