06
極めつけは―――……
雪の上でぶっ倒れている秋穂。
近寄りしゃがみ込んで目線を合わせ、呆れ気味に声をかけた。
「どうした」
「こ、こしひねったぁ……!
「阿呆」
雪玉を思いっきり投げようとして腰を捻ったそうだ。少女は、正真正銘の阿呆だと思う。
「うう……ていうか、もうカオスですよねー」
「そうだな」
「止めないんですか?」
「止める体力もない。勝手にさせとけ」
「さいですか。でも、うちは騒ぐの楽しいです!」
秋穂は笑いながらカオスになっているグラウンドの真ん中に目を向けた。ゆるい声で「一流さん頑張れー」と応援し始める始末。
まあ、俺も止める気がない。少女と同じようなものだ。
そこではっと気付いた。いつになく自分の顔が緩んでいることに。
他の奴から見たら、笑っているように見えるのだろうか。よく分からない。だが半ば雪白を止めなければ……という義務感で来たのに、それも放棄して俺は何をしているのだろう。
遊びに来たわけでも、あるまいし。
すると少女が俺を見上げた。そして、不安そうな顔をする。
「……なんだその顔」
「楽しく、ありませんか?」
「え?」
「坂城さんが難しい顔してるから、楽しくないのかと思って」
「……別に」
そう素っ気なく言って話しかけて欲しく無いと態度に出す。なんだか気持ちがもやもやした。人の輪にいる自分が気持ち悪くて仕方がない。面倒な他人とは付かず離れず……たまにお節介と分かりつつも関わって来たが、基本、”独り”だったのに――今更、人の輪に入りたいとは思わない。溢れ出た気持ちを否定したくてしょうがない。
秋穂に素っ気なく返したのは、このまま秋穂と話していたら、よく分からない感情を少女にぶつけてしまうかもしれないと自分を恐れたから――……少女は良くも悪くも明るくて素直で、俺には眩し過ぎる。そんな少女に当たりたくはなかった。
そんな俺の気持ちとは裏腹に、秋穂は「よっこらせぇ……」と中学生とは思えないおばさんくさい声をだして、立ち上がった。
そして、意味の分からないことを言い出した。
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