坂城くんと秋穂ちゃん | ナノ




  04




礼宮先輩や藤野先輩は秋穂と椎名・中学生組を何なのかと気にしているし、秋穂と椎名も知らない人が多い中、少し人見知りをしているのか二人で固まっている。


雪白が来ないとすべてが始まらない。というか、この人数で何をする気だ?


すると、「キーン!」という独特の機械音が耳をつんざいた。



『ッッ!!』



全員が驚いて耳をふさぎ、何かとグラウンドの方を見た。


『Hello! 皆さん揃ったわね?』


一人、雪白が楽しそうな笑顔を浮かべ拡声器(避難訓練などで教頭先生などが持つ機械的メガホン)を持ってグラウンドの真ん中に立っていた。


いつの間に……。朝義がいち早く「キーン!」から回復して雪白に吠える。


「てめぇ! こんな寒い中呼んで何しようってんだ!?」
『吠えんじゃないわよ朝義。耳元でキーンさせるわよ!?』
「それ周りにもうるせえよ!」
『とりあえず黙りなさい。あと、皆さん集まってくださーい。今日何をするか説明するわ』


各々、困惑しつつもグラウンドに足を踏み入れ雪白のところまで行く。朝義はイライラと雪白への文句を槻川に言っている。……こうなったら諦めた方が早いというのに、往生際の悪い。


雪白は白いジャージを着ていた。有名スポーツブランドの橙の三本線が入っているもの。その上に黒のダウンジャケット。細身で美人のコイツにはなんでも似合うんじゃないかと思う。雪白は拡声器を下に置き、何をするか話し出す。


「さーて、"雪合戦"がしたくて皆さんを呼んだのだけど、防寒はおk?」
『雪合戦?』


みんなの声が揃い、疑問を呈(てい)する。


「そう。雪合戦! 一度大人数でやってみたかったのよー」
「『やってみたかったのよー』じゃねえよ! 雪合戦ごときで高校のグラウンド貸し切りにするか!?」
「それをするのが私の仕事」
「あやめさんカッケー」
「でしょう!」


椎名が合いの手を上手く入れ雪白は図に乗る。……相変わらず、やることがなすこと規模が違う。腰くらいまでの雪の盾のようなものは、雪玉除けか。本当に準備が良い。夏のような大規模のものではないし、みんなで楽しめるだろうと思った。


現に、俺の隣にいる秋穂は菫にテンション高く話しかけている。


「良いね、良いね! 誘ってくれたことがまず嬉しいかも!!」
「テンションたかいし。まーそうかも」


神人や平野も二人で「勝てたら嬉しいなあ!」「そうですねえ」とほのぼのと言っている。


そして、篠塚先輩は一人「……どさくさに紛れて鮎川を――……」などと不穏なことを考えていた。


だが、朝義はまだタラタラと文句を垂れている。そんな朝義を見て、なにやら槻川が申しわけなさそうに耳打ちをした。すると、朝義は「したことねえの!?」と驚いて槻川が頷いたのを見たあと、「……今日だけ付き合ってやる」と言って雪白に文句を言うのを止めた。


そして、雪白は三年生三人に向かって言う。


「三年生方も呼んだのは夏の時にぐったぐったになった仕切り直しで、どうでしょう?」
「夏の、」「仕切り直し……」


藤野先輩はなにも言わなかったが、礼宮先輩と鮎川先輩はなにか思うところがあるのか、そう呟いた。


「……良いね。やろうよアリアちゃん」
「そう、ですね。チームも変えて……今度は楽しくやりましょう」


二人は珍しく意見を合わせて、力強く頷いた。



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